八田美咲の場合
外からはちゅんちゅんとスズメの鳴く声がしている。
実に平和な朝である。
「……んっ」
カーテンの隙間から射し込む光が顔に当たり身じろぎをした。
このまま二度寝したい気持ちを抑え、俺は目を開く……と、そこには見知らぬ男性がいた。男性というよりは、顔立ちからして少年と言ったほうが言いのだろうか。
「ふぇ?」
寝起きで呂律が回っていないのか、口から発せられたのは変な声で、ちょっと恥ずかしい。
そんなことよりも、この状況だ。
何で、こんなところに?
ってか、誰?
え、え?
答えの出ぬ疑問は頭の中をぐるぐると駆け巡る。
俺はどうしたものかと頭を抱えた。
起こして良いのだろうか。
ふと、妙なことを考えてしまった。
いや、その前にここは自宅なのか?
と。
そんなはず、あるわけないと辺りを見回して見るとそこは自分の部屋とは間取りこそ似ているものの全然別の部屋で。
さぁっと全身から血の気が引いていくのを感じた。というか、実際に寒い。
って、よく見たら俺、上半身裸じゃねぇか!!
何で!? アッ、俺、寝るときは上を脱ぐ派だったぜ。
ズボンはちゃんと履いてる。ジャージだけどな。これが一番履きやすくて好きなんだ。
そういえば、ケツは無事なのか。というか、俺の貞操はどうなった。
さっと腰やケツに手を当てるが違和感はない。痛みもない。…ということは、俺の貞操は守られたということで…。
ほっと一息つくのも今の現状が改善されたわけではない。間違いを犯してはいないが…問題は、何で俺がここにいるのか、っていう。
「んっ……」
その時だった、少年が身じろぎをしうっすらと瞼を開けた。交差する視線。
一瞬、時が止まった気がした。
そして……
「う、うわあああああ!? だ、誰だテメェ!」
「お前こそ誰だよ! って、そんなこと言ってる場合じゃねぇ!」
少年は飛び起きて、俺から距離をとる。少年は威嚇をするように吼える。
「て、テメェ! 俺に何しやがった!」
「何にもしてねぇ! 気づいたら此処にいて、ってうああああやめろってえええ!」
少年が飛び掛ってきた、俺はぎゅっと目を瞑り衝撃に備える、がいつまで経っても衝撃がこない。
俺は恐る恐る目を開けた。すると、少年は居らず、見慣れた自室に戻っていた。
「な、何だったんだ…?」
夢だったのだろうか、それにしてもリアルな夢だ…。俺はそう思いながら、もう一度寝ることした。
どうせ休日だし、構わないだろう。おやすみなさい。
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