02
俺は昔のことを思い出していた。
軍神を召喚した身体は消耗しており、すぐには回復しないだろう。それでなくても、戦いで疲労した身体はギリギリだった。そんな状態だからだろう、昔のことを思い出したのは。
今は戦場の最中だ。魔導院解放作戦が開始されてから、さほど時間は経っていない。まだ、気合を入れなければ。
俺は、軍神を召喚しても死なない。それは、朱雀にとっても有意義な存在だろう。特に、今のような戦場では特にそう感じる。
「はぁっ、はぁっ…」
俺が召喚したバハムートは皇国兵をなぎ倒し、一人一人を確実に殺していっている。ここが安全圏だといっても油断は出来ない。すぐに退却しないと。
朱雀軍が押し始めた、そう思ったときだった。
バハムート隊が召喚したバハムートが咆哮を上げ突如力を無くしたかのように地に落ちた。それだけではなく、朱雀軍は魔法を使わず――いや、使えないのか、成す術もなく、一人、また一人と殺されていった。
「なっ!? 魔法が使えないのか…?」
俺は慌てて魔力を込め、詠唱に取り掛かる。使うのはケアルだ、傷を癒す白魔法。ケアルはいつもと変わらずに発動できた。嫌な予感が頭を過ぎる。まさか、クリスタルから魔力が送られていないのか?
しかし、俺は魔法が使えるし召喚したバハムートは地に落ちることも無く敵を粉砕していた。どういうことだ…?
とにかく、この場から離れようとしたとき、COMMから連絡が入った。それは、俺の母代わりでもあるアレシア・アルラシアからだった。
「ゼロ、貴方に極秘任務を与えるわ」
「マザー!?」
いきなりのことに驚くが、すぐに思考を切り替え任務内容を聞くことにした。
いくら、マザーから蘇生して貰えるからといって、油断は出来ない。ここは戦場だ。一瞬の油断が命取りになる。
「一般兵が0組にCOMMを届けようとしているわ。ちゃんと届くように護衛してあげて。もし、彼が亡くなった場合、貴方が代わりに届けて頂戴。それと、皇国がクリスタルジャマーを展開中よ、貴方は影響がないけど気をつけて頂戴」
「クリスタルジャマー? …だから、魔法が使えないのか、了解した。合流地点は?」
マザーから、合流地点を聞けば身体に鞭を打ちながら走る。もし、無事に作戦が終了したら思いっきり寝よう。
んで、腹いっぱい飯を食おう。……何か、死亡フラグ立ったような気もするが、気にしない、気にしない。
合流地点付近に差し掛かった時、見つけたのは見覚えのある背中に見覚えのあるチョコボ。
俺は、その背中に向かって声をかけようとした時だった、乗っている男がぐらりと揺れ、地面へ落ちる。
「イザナッ!」
俺は、男――イザナの名を呼びながら駆け寄る。イザナは酷い怪我を負っていた。
「大丈夫…そうには見えねえな。今、回復してやるから」
そうして俺は、ケアルガの詠唱にかかる。しかし、この怪我を治せるかどうか…。怪我が治っても、失った血液までは戻らない。
「ゼロか、回復って…魔法は使えないはずじゃ…」
「俺は影響を受けないみたいだ、イザナ…悪いが休ませてやる暇はねぇ。ポイントまで行くぞ」
「そっか、ゼロが護衛だったんだな。あぁ、大丈夫だ」
詠唱も完了し、イザナにケアルガをかけるもあまり良くはなさそうだ。イザナを傷口に触れないよう抱え上げればチョコボに、チチリに乗せる。0組との合流ポイントまではもうすぐだ。
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