01


昔のことを思い出した。
まだ、小さかった頃だ。俺が4歳の頃、両親が死んだ。死んだ原因は覚えていない、いや…原因だけじゃない。両親の思い出も顔も思い出せない。死者の記憶は忘れる。それが、この世界では普通のことだ。もし、記憶が残っていたら、と考えるとどうも嫌だ。

親戚もいなかったため、幼くして天涯孤独の身。どうしようかと、途方にくれていた時に引き取ってくれたのがアレシア・アルラシアだった。俺は、アレシアをマザーと呼び、母のように慕った。


そこで、数年過ごしたとき、俺に兄妹が出来た。一人一人の個性が凄かったのを覚えている。俺が一番年上だったからか、兄のように接してくれたのは純粋に嬉しかった。

俺達は、候補生になるために訓練を始めた。そこで、自身の武器となるものを探した。マザー曰く、武器が選んでくれるらしい。
それで、一番手になじむのは身の丈ほどある大剣だった。最初の頃は、重くて大変だったが使っているうちに慣れ、いつの間にか使いこなせるようになっていた。

そして、数年経ったある日のこと。俺はマザーから呼び出された。

「来たわね、ゼロ。貴方には魔導院に行ってもらうわ。そこで、先に普通の候補生として振舞うの。出来るわよね?」
「勿論だ」

俺は頷き、にこりと笑った。マザーの言うことは絶対だ。
今思えば、マザーに褒められたい一心で頑張っていたのだろう。

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