骨の欠片すら


私の彼氏様は愛しいけど憎いヤツ。でも、そんなヤツを好きになったのは事実で、むこうもこんな私を好きになってくれたのも紛れもない事実。
事実事実言ってるけど本当に事実なんだから仕方ない。
私の彼氏様は「僕の言うことは絶対」とかいうちょい頭のイカれたかわいそうなヤツだが、しっかりしているところはしっかりしていて、それなりに優しい・・・?どうだろうか。

この前、いきなり「いつになったらあの段階までいくんだ」とか言いながら顔を近づけてきたから、この馬鹿チビ!ってさけんだら、ハサミの刃を向けてきたから冷や汗が滝のように出た。なんたって心の準備ができてないのだ。遅すぎることはわかってる。すごくあせってる。でも、怖いのだ。
なにも言わなくなった私を見て察してくれたのか笑って頭を撫でてくれた。
やっぱりさっきのハテナマークはなし。私の彼氏様は優しい。

そんな私の彼氏様は私が愛してやまない人。
むこうも同じだといいなと願ったり願わなかったり。そこらへんは、素直じゃない私の素直じゃない言葉。本当は誰よりも願ってるのに、こしょばゆいこの感情がどうもじれったくて、なかなか私を素直にしてくれない。だから私は大切な彼氏様に自分の素直な気持ちが伝えにくいのだ。それは単なる言い訳にすぎてしまうのかもしれないけれど。
とりあえず、あい らぶ ゆーなのだ。


身体の揺れる感覚でゆっくりと瞼が上がる。
瞼を上げた先には見慣れた赤毛があった。ため息をつきながらこちらを見下ろしている。え、何この子。委員会終わるまで待っててあげたのに。寝ちゃたけどさ・・・。

「おかえり〜征。遅かったね。」 

「少し長引いたんだ。」

不機嫌そうに私の前の席に腰を下ろす私の彼氏様。その彼氏様が委員会だったため、一時間くらい待っていたのだ。爆睡して。ご丁寧に夢も見て。夢の内容は覚えていないけれど。


「・・・・・ねぇ征。」

「なんだ?」

「私がアリンコになっても、加齢臭の漂うお父さんのTシャツ着ていても、私がすっごい悪いことしてここに居られなくなっても、それでも征は私のこを好きでいてくれる?」 
 
ありえないことを聞いた。なんでこんなことを聞いたのか分からない。
忘れてしまった夢の内容が悲しい夢だったからかもしれない。

「当たり前のことを聞くな。」

彼氏様はふっと笑って答えてくれた。


「じゃあ、もし私が・・・・・征のことを嫌いななったら・・・?」

彼氏様は一瞬大きく目を開いたが、真っ直ぐこちらを見て形のいい唇を動かした。

「100パーセントありえない話だろう?」
 
「あは、もちろん。」

あぁ、やっぱり愛しい。




(骨の欠片すら愛しいのです)




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