今度


「黒子くん!」
「なんですか?」
「あのね〜!」

とか言って話し始める名前っちはとても可愛い。本当に本当にめっちゃ超可愛いんだけど、でもその笑顔を向けている相手が俺じゃないっていうことが気に入らない。名前っちの彼氏は、黒子っちだから。彼氏なのかはわかんないけど、少なくとも名前っちは黒子っちのことが好き。

「あたしね、黒子くんに会えて本当よかったなって思うよ」
「なんだか照れますね。僕もですよ」
「へへっ、嬉しい」

前黒子っちに名前っちのことどう思うか聞いたら恋愛感情で好きじゃないとか言ってたのに。そんなこと言っちゃって、黒子っちだって満更じゃないんじゃんね。うそつきだなあ、黒子っちも、名前っちも、みんなみーんな、うそつきだな。とか言ってる俺も、"うそつき"なんだけどさあ。

「黄瀬くん黄瀬くん!黒子くんがね、あたしに会えてよかったって…!」
「よかったね名前っち!」
「うん…!嬉しすぎて涙出そう…!」

なにそれ。なんで涙ぐんでんの、なんでそんなこと言うの、俺が誰よりあんたのこと思ってるのかとか、黒子っちのこと憎んでるかとか、そんなの考えたことないんでしょ。まあわかるわけないよね、だって俺はいつも自分を偽ってる。うそだけど、あんたのこと応援してるもんね。ごめんけど本当は俺、あんたのこと応援してないよ。



「黒子っちぃ、名前っちのこと、本当にどー思うんスか?」
「またいきなりですね」

黒子っちはあからさまに嫌そうな顔をした。俺のことを睨むみたいにじとりと見てきて、俺自身も若干不愉快だ。

「いいから、答えてよ」
「大切な友人ですよ。それ以下でもそれ以上でもありません」

へえ、そうなんだ。"大切な友人"なんだ。本当だね、信じていいんだね?思わず口元が緩む。気持ち悪いと殴られたけどそれでも口元はゆるゆるのままで、マゾかとか言われた。ありがと、と言って黒子っちと別れた。それからすぐそこの角のとこへと歩いた。だってわかってたから。

「だってさ?…名前っち」
「…っ、なんでそんなこと聞いたの?なんであたしに聞かせたの…!?」
「あんたの努力は無駄だって教えたくて」

違うよ、こんなこと言いたいんじゃなくて。違う、違うから、本当は、本当は…!
なんで俺じゃないかなってずっと思ってた。名前っちが黒子っちのこと好きになる前から俺は名前っちのことが好きで好きで堪らなかった。俺を見てくれないかなって思ってた。だから応援するって言って近付いたんだ。そんなつもりはなかったけど。でもやっぱり俺はうそつきで意地悪で意気地なしで馬鹿だから、無理だったなあ。

「最低だよ黄瀬くん…黄瀬くんなんか、大嫌い…」


今度生まれてくるときは、全ての幸福が包みますように




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