まわりみち

 もっとも初めにちぎった夜からしばらく、それは、
苦痛を耐える時間ときだった。

──…だのに。

 その男と肉体をふれあうときの感触が、段々と、変容してゆく。

──それはきみょう・・・・な熱を持つ。

──さなぎの中で、どろどろになったむし・・みたく。
 なにかが、くずれ、ふたたび形をしてゆく……。



──ある夜の、全て終わってもの・・いころ。
 とうとつに──「賭けようか。」かれ──…
ペルを、盤 戯ボードゲームに女は誘う。

「何を賭ける」

 男の声に聞かれると、おんなは──いったい、何をおもっているのやら、解らん顔で、

「──わたしが勝ったら今一度いまいちど。」

 しなやかな、つよい脚──野をゆくけものと似通うそれは──おんなの、汗を残したももはだ。そのまだほとおる湿りけが、男のからだと無感情に接していた。



──ペルとかの・・じょの幼少のみぎりより──…。

 昔から、盤戯セネトは、ふたりでやると五分ごぶの勝負。
──…気のしょうの類似性が災いし、とかく勝負が
つきにくい。じりじりと、ながく、じれったく続いたあとに──ほんとうの運か、刹那の勘の差で、ふいにぱきり・・・と白黒がつく。

──…どちらが勝つかはいつも五分ごぶ



──『わたしが勝ったら今一度いまいちど。』

──にどめ・・・ねやに誘われて、舌を噛むような思いで勝負に乗ったろうに。
──…そのひとは、まじめにたたかう。
 ひだるいならば、わざと敗れてすきなだけ・・・・・喰らえばいいのに。

「……おまえは莫迦ばかだ」
 おんなに言われて、
「……そうかもしれん」
 おとこは、すなおに認める──。

──その愚直を知るがゆえ。……知るがこそ、
──…はじめて、そのひとは、自らさそい・・・をかけたのだ。



──けだるいからだ・・・で寝そべって。ふたりは、
いつもどおり駒をす。



──いつでも、本気でやって勝負は五分ごぶ

 その夜も。いつもと同じにたたかって──…
おんなが、勝った。












性質の似かよったもの同士のお閨もまた、盤戯の時の有様と似るのかもしれません。
──ながく、じれったく。



昨年の『火夏星』の続きではなく申し訳ございません…。火夏星のほうは直前までテキストライブで追い込み進捗配信をしたものの…間に合いそうにないので、ひとまず完成しているこちらをアップしました。

昨年の11月ごろ、流行りの(?)800文字SSというものをやってみよう となった時に生まれた短編です。800文字を平然と超過しました。



ペルさんお誕生日おめでとうございます!

今年も すこやかであってくれ──。


21.08.23
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