同じ体温に包まれる
「え、冗談だよね?」
「オレがこんな冗談なんて言うと思う?」
「で、ですよね……」
「ほらさっさと行くぞ」
「ちょっとまっ、うわあ!」
逃げるように一歩ずつ後ろに下がるも、まるで逃げ道を塞ぐかのように二人のベルに挟まれれば、背後にいた紫ベルに捕まえられ軽々と抱き上げられる。所謂お姫様抱っこだ。
彼はそこまで体が大きい方ではないものの、筋肉はしっかりとついており、一人や二人くらい軽々と持ち上げることが出来る。突然距離が近くなったことと、揺れる煌びやかな金糸に、思わず胸がきゅんとときめいた。いや、ときめいている場合じゃない。
「行くってどこに……」
「分かってるのに聞くなよ」
「う……」
「しし、諦めな」
案の定、連れてこられた先は私の寝室だった。何故彼の部屋では無いのかというと、単純にいつも散らかっているからだ。何回彼の部屋を掃除したか最早覚えていないが、毎度次の日にはあっという間に散らかっているのだから、これも一種の才能だと思う。言ったら絶対怒られるから言えないけど。
紫ベルはベッドにゆっくりと私を降ろすと、そのまま覆い被さるように組み敷いた。気持ちいいことって、そういうことだよね……?え、いや本当にするの……?三人で?
「なまえ」
「んっ!……ふぁ」
名を呼ばれたかと思えば、すかさず紫ベルに唇を奪われる。ベルが二人に増えたことでさえ、まだ理解が追いついていないというのに、これから三人でするだなんて心臓が持つ気がしないのですが……。
「なまえはしたくねーの?」
「さ、三人でなんて……」
「嫌?」
「い、嫌と言うわけでは」
「しし、ならいーじゃん」
断れないと分かっていて、顔を近付けながら問うてくるのだから本当に狡い。自分の顔の良さを分かっている証拠だ……。毎度これに断れない自分も悪いのかもしれないけども。
紫ベルは溺れてしまいそうなほどの甘いキスを続けた。口ではなんだかんだ言っても、私はこのキスが好きだった。段々と薄ぼんやりと意識が微睡む中で、必死に彼に応えるように舌を這わせる。そうして自分でも気付かぬ内に、彼のキスに溺れていくのだ。
「っ、ちゅ……、ん」
「ししっ」
「ぁっ?!、んんっ、ベル……ふぁ」
少しだけつまらなそうにしていた赤ベルが何かを思いついたかのように笑みを零すと、私をゆっくりと抱き起こして、背後から胸を包み込むように触れた。突然の出来事に思わず声が漏れるが、紫ベルは変わらず口付けを続けてくるので、瞼をぎゅっと閉じて快感をやり過ごす。しかし、彼等はそんなに甘くはなかった。
「我慢すんなよ」
「んっ、ふ……ぅ、っ」
「ここ、好きだろ?」
「ぁ!ん、んん〜っ、っあ」
胸の先端を服の上から指で引っ掻くように掠められ、声を我慢することが出来ない。耳元で囁くようにベルの声が響くと、心臓がぎゅっと締め付けられるような感覚がする。前にも後ろにも大好きなベルがいて、愛でるように触れてくる一瞬一瞬に、思考がどろどろと蕩けていくような気がした。
「ほらばんざいして」
「ん」
「いい子」
いつもだったら意地悪なことを言ってくる時もあるけど、今日はたくさん甘やかしてくれる日らしい。優しく頭を撫でられたので思わず目を閉じれば、瞼にそっと赤ベルがキスをしてくれた。
はあ、また胸がきゅんとときめいた。