明日の春

※未成年の飲酒シーンがありますが、推奨する意図はございません。

 冬のようにまっすぐで、春のようにやわらかい。彼は、まさしく今日という日がぴったりな男の子だと思う。


「いや、ありえないだろ」
「ええ? そんなはっきり言う?」
「逆にどこをどう見たらそうなんだよ」

 冬の教室内は冷たい。古びた木造、加えて室内にはわたしと悟くんしかいないものだから、暖房がついていようとも暖まるまでに時間がかかる。がらんとした雰囲気も、どこか寒さを助長させるようだった。
 隣の席に座る悟くんが、カコカコと熱心になにかを打ち込みながら「つうかさ」と間髪入れずに口を開く。そうして打ち終えたのか机の上に携帯を置いて、わたしの方に体ごと向いた。

「普通に本人に聞けばいいじゃん」
「それができてたら悟くんに聞いてないよ」
「なんで? 断られるかもって?」
「それも、だけど、迷惑かなって」

 ふうん。悟くんは探るような視線をわたしに向けたまま、頬杖をつく。まっすぐと投げかけられたそれは、嘘も見抜いてしまいそうだ。わたしはまばたきをひとつして、そっと床を見つめた。

「別になんもないだろ。そして彼女もいない。以上」
「なんかすっごく適当……」
「つーかもう二人でどっか行けよ。わざわざ四人で祝う必要あるか?」
「悟くんはみんなにお祝いされるの楽しくなかった……?」
「そういう意味じゃねぇよ」

 ではどういう意味だろう。一ヶ月と少し前。彼のために行われたそれは、急遽決まったもののそれなりに楽しんでいたように見えた。彼にとっても、わたしにとっても、あまり馴染みのないことだったから。

「まぁお前がそれでいいならいいけど」
「それって、どういう意味……?」
「お前なぁ……」

 呆れたような表情とトーン。彼がわたしによく向けるものだ。

「悟」

 すると突然、ガラリと扉が引かれる音とともに届いた声に、わたしは思わずびくりと肩が震えた。廊下から、ひゅうっと冷えた空気が足元を流れる。

「ヤガセンが呼んでる」
「あ? なんで?」
「書類不備。昨日の報告書、適当に書いて出しただろ」
「あれ以上書くことなんてないし。てか傑が付け足しておいてくれればよかったじゃん」
「それくらい自分でやんな」

 はぁ、と大きなため息をついて悟くんが立ち上がる。珍しい。いつもなら面倒だと駄々をこねて、夏油くんに諭されてからようやく向かうくらいなのに。一連の流れを目で追うと、ぱちり、と彼の青い瞳と目が合う。なにを考えているのかはわからないけれど、なにかを考えていることはわかった。
 入れ違うように悟くんが教室を抜ける。すると夏油くんはその後ろ姿を目で追って、わたしの目の前、悟くんの席に腰かけた。部屋、戻らないんだ。軽く首を傾けた彼と目が合う。

「珍しいね、二人がここに残ってるの。硝子は戻ったの?」
「あ、うん……少し前に。夏油くんは戻らなくていいの? 悟くん帰ってくるまで待つ?」
「いや、そういうわけじゃないけど。報告書はもう出し終えたし」
「そっか。お疲れ様」

 夏油くんは、ありがとうと言ってやわらかく微笑んだ。どうしよう、話題が見つからない。そもそもどうして彼がここに留まったのかも、いまいちよくわかっていなかった。でもこれはチャンスなのかもしれない。わたしは小さく拳を握って、彼の目を見つめた。

「あ、のさ、夏油くん」
「うん?」
「二月の三日って、空いてるかな?」
「三日? その日なら任務もないし空いてるけど……」
「夏油くん、誕生日だよね? もし空いてたら、悟くんのときみたいにみんなでお祝いできたらな、なんて思ったんだけど、どうかな?」

 ぱち。音が聞こえてきそうなほど、ゆっくりとしたまばたきののち、彼は「覚えててくれたんだ、ありがとう」と言った。断られる緊張か、ずっと胸が熱くてどきどきとしている。

「空いてるよ。逆になまえや硝子はいいの? 二人で遊びに行くって言ってなかったっけ」
「ううん、それは再来週だから大丈夫だよ。あと悟くんも空いてるって言ってて」

 彼のまなざしは、悟くんのものとは違う。それも相手によって、また少し変わってくるのだ。わたしに向かってくるそれは、隙間から零れる冬の陽射しのようで、少し擽ったい。逆に悟くんは、夏油くんでも硝子ちゃんでもわたしでも、向けるまなざしはほとんど変わらない。
 夏油くんはそのやわらかさを変えることなく、それじゃあと微笑んだ。

「よかった。なにか食べたいものとかある?」
「なんでも。みんなの食べたいものでいいよ。どうせまた硝子は酒買ってこいとか言うだろうし」
「駄目だよ。夏油くんの誕生日なんだから」

 それじゃあ結局、悟くんの好きなものばっかりになっちゃうよ。そう言うと彼は、確かにそうだねと笑った。もちろん付き合いの長さもあるだろうけれど、わたしは彼自身が好きなものをあまり知らない。知りたい、と思う。ううん、ずっと前から、わたしは彼のことをもっと知りたかった。

「でも本当に、好き嫌いがあまりないんだ。だから気にせずみんなが好きなものを選んで欲しい。買い出しとかはお昼に行けばいいかな?」
「夏油くんの誕生日なのに?」
「一人で待っていても退屈だろう?」

 それはそうかとわたしが頷くと、彼もまたひとつ頷いた。

「じゃあ十二時に集合して、お昼を食べてから買い出しに行くっていうのはどうかな」
「うん、いいね。そうしようか」

 そうと決まれば準備も必要だろう。悟くんや硝子ちゃんにも連絡しておかなければ。そう言うと、夏油くんはほんの少しの間を開けて、躊躇ったように口を開いた。

「それ、」
「うん」
「……いいや、なんでもない。悟には私から言っておくよ。どうせあとで会うだろうし」
「本当? じゃあお願いします」

 硝子ちゃんに言ってくる。わたしがそう言って席を立つと、夏油くんは行ってらっしゃいと言ってわたしを見送った。本当のことを言うと、緊張してあれ以上いられないと思ったからだ。


* * *


 あの日、夏油くんが一瞬見せた表情が頭から離れない。いいや、あのときだけじゃない。夏油くんはときどき、わたしにああいう顔を見せる。それは大抵二人きりのときに限っていて、必ず最後まで言わずにくちびるを引き結ぶのだ。それを見るたびにわたしは、彼になにか無理をさせているのではないかと思ってしまう。

 立川駅には駅前に複数の商業施設が揃っている。わたしたちは昼食後、デパ地下を巡って、パーティーの要となる料理やケーキを調達していた。

「次は向こうの方見てみようか。硝子ちゃんはなにがいい?」
「酒に合えばなんでも」

 週末に比べればそうでもないのだろうが、駅周辺は案外混みあっていた。こういうとき、背の高い悟くんや夏油くんがいるのはとてもありがたい。目印にもなるし、反対にすぐに見つけてもらえたりする。

「おい、はぐれんなよ」
「悟くんがすぐ行っちゃうからだよ、ってあれ、夏油くんは?」
「傑ならあそこ」

 白くて長い指がさす方へ、すっと視線を伸ばしていくと、一人離れたところに立つ夏油くんを見つけた。道案内をしているのだろうか。大きな背を屈め、わたしたちよりも年上であろう女性たちとなにやら会話をしている。その光景はもう見慣れつつあるものだった。任務後に依頼人から感謝をされる場面や、こんなふうに困っている人に手を差し伸べたりする場面など。
 悟くんはわざとらしく変な顔をした。まただよ、といった様子だ。硝子ちゃんはすでに興味が失せたのか、携帯に視線を落としていて、カチカチとメールかなにかを打ち込んでいる。

「お前はいいわけ?」
「どういうこと?」
「綺麗なお姉サンたちに鼻の下伸ばしてるあいつ見るの」

 硝子ちゃんの指がほんの一瞬止まって、わたしを見たような気がした。視線の先ではお姉さんたちが夏油くんに頭を下げている。どうやら会話は終了したらしい。

「良いも悪いも、わたしは別に……そもそも鼻の下なんて伸ばしてないし。悟くんじゃないんだから」
「あ?」

 凄む悟くんを他所に硝子ちゃんが一言、うるさいと呟く。すると悟くんの背後から、ごめんお待たせと夏油くんが戻ってきた。

「おっせーよ。なまえがめちゃくちゃ怒ってんぞ」
「ちょっと悟くん、勝手なこと言わないで」

 驚いたように目を見開く夏油くんに、必死に弁解をする。悟くんが勝手に言ったことで、全然そんなことないからね。しかし彼自身、悟くんの冗談だとわかっていたのか、すぐに誤解は解けたようだった。
 買い物を再開して、次の目的地へと向かう。四人で行動するときは大抵、わたしと硝子ちゃんが横に並んで、その後ろに夏油くんと悟くんが並ぶことが多い。今回も同じ形となった。

「本当はさ、どうなの?」

 後ろとの距離が空いたときに、こそっと硝子ちゃんが囁くように言った。本当は? とわたしが首を傾げると彼女は、さっきのさ、と夏油くんを一瞥した。

「五条が言ってたやつ。今日もわざわざ確認したんでしょ? 彼女と予定あるんじゃないかって」
「う、え、な、なに急に」
「珍しく五条があんなこと言ったからさ。いくら昔馴染みの関係とはいえ、それなりになまえのこと応援してんのかなって思って」
「うーん……それはどうだろう」

 わたしと悟くんは、簡単に言うと幼馴染みたいなものだ。とは言っても片や五条家の跡継ぎ、もう片方は五条家の傘下で由緒はあれど実力はそれほどない小さな家の一人娘。同い年とはいえ、幼いころは互いの家柄もあって、遊んだことや会う機会さえあまりなかった。
 小さく唸ると、彼女はそれで? と催促するような視線を向けた。わたしは諦めるように息をついた。

「なんていうか、そこを含めて好きになっちゃったから」

 今日みたいに道案内をしたりだとか、依頼人や関係者の相手をしたりだとか。別に夏油くんは、誰かから横取りしてまでそうしようだなんて思っちゃいない。そうするべきだと思ったときに自分がいたから、そうしてそれに気づく視野が人よりも優れているから、彼の立ち振る舞いは完成されている。自然と、躊躇いもなく。けれどもそれが本当にできる人は、案外少ない。そしてそんな彼に、わたしは少しずつ惹かれていったのだ。
 だからこそときどき見せる、あの少し迷ったような表情を見るたびに、わたしは緊張して不安になる。わたしが見てきた十ヶ月間の彼が、彼の我慢の上で成り立っているのではないかと。わたしのこの気持ちが、彼の負担になるのではないのかと。そんなことを考えていたら、悟くんが言うように今日二人で遊びに誘うことも、ましてや好きだと告げることも、わたしにはできなくなっていた。
 硝子ちゃんはわたしの答えに、趣味悪、と眉をひそめた。わたしはそんなことないと思うけれど、彼女はこんな話をするとよく、好きすぎてフィルターでもかかってんじゃないのか、なんてことを言う。けれどもきっとそれも間違いではなくて、好きだからこそ、そんなふうに見えたり、気づいたりするんだと思う。


* * *


 夏油くんの誕生日を祝うどころか、途中からはただの酒盛りのようになってしまって、悟くんの部屋は少し荒れた。ケーキも半分は悟くんが食べたけれど、残りの切り分けられたものは食べかけのままテーブルの上に残されている。
 硝子ちゃんと夏油くんはお酒が飲めるけれど、わたしと悟くんは論外だ。一度、少しだけ味見をさせてもらったときに、悟くんと二人して駄目になってしまったので、以降禁止令が出されている。そもそもわたしたち全員未成年なんだけどな、と思ったけれど、それを言うのは違うような気がしてやめた。

「あれ、もしかしてもうお酒しか残ってない?」

 テーブルの上や床に置かれたペットボトルを見ても全て空だ。反対に硝子ちゃんが持ってきたものや、途中で買ったお酒は飲みきれないほど残っている。

「比率おかしすぎんだろ」
「わたし自販機の方まで買ってこようか。悟くん、なにか飲みたいのある?」
「コーラとメロンソーダとオレンジ」
「全然遠慮しないね」
「なまえから聞いてきたんじゃん」

 もう夜も遅いというのに、そんなに飲むつもりなのだろうか。水分ばっかりでお腹がちゃぽちゃぽになりそうだ。するとわたしの隣に座っていた夏油くんが腰を上げた。

「私も行くよ」
「え、大丈夫だよ」
「なまえの分もあるし流石にもう夜中に近いからね。一緒に行った方がいい」
「おーじゃあ傑よろしく」
「大体なまえに任せないで君が行けば済む話だろう」
「だぁっから最初に言ってきたのはなまえだろ?」

 夏油くんは呆れたようにため息をつきながら、じゃあ行こうか、と言って廊下へ向かった。置いていかれないように、急いで後ろに着いていく。
 廊下は暗く、そして冷え込んでいた。山奥に位置するせいか、夜から朝にかけては特に気温も下がる。わたしは思わず肩を震わせ、両手をぎゅっと握りしめた。

「さ、さむ」
「私が行ってこようか? 風邪ひいてもいけないし」
「ううん、行く。一緒に行きたい」

 月明かりでぼんやりと見える夏油くんが、驚いたようにゆっくりとまばたきをした。あ、今の、間違えたかも。

「ごめん。そこはわたしが行く、だよね」
「ううん。多分、なまえにどれだけ断られてもそこは譲らないからいいよ。そうじゃなくて、珍しいなと思ってちょっと嬉しかったんだ」

 珍しい? しかしわたしが尋ねるよりも先に、夏油くんは自販機の方へ向かってしまった。先ほどまでお酒を飲んでいたというのに、後ろ姿はいつもと変わらず、大きくてすっと伸びている。その背中を見ていたら、わたしは自然と彼を呼び止めていた。

「夏油くん」

 静寂な廊下にわたしの声が響いた。澄み渡る冬の空気のお陰か、まっすぐ届いたような気がする。広い背中がゆっくり回って、彼と目が合った。

「お誕生日おめでとう」

 三度目だった。お昼に集合したときと、数時間前に乾杯したとき。しつこいかな、と思ったけれど、気がついたらそう言っていた。
 夏油くんは他の二回のときよりも朗らかに笑って、ありがとうと言った。春のようだった。普段の凛とした姿はまるで冬のようなのに。胸の奥が、きゅっと苦しくなった。

「なまえが誘ってくれて嬉しかったよ」
「ううん、わたしは別に……こんなふうに友達みんなでお祝いすること、あんまりなかったから」
「悟のときも言ってたよね。家族で祝うのも、私はいいと思うけど」

 けれどもきっと、ここにいなかったら知らなかった。友達と一日中遊んだり、だらだらと過ごしたり、喧嘩をしたり、お祝いをしたり、なんでもないような普通のこと。

「誰でもいいわけじゃないの。多分きっと、みんなだからだと思う」
「……」
「悟くんもきっと、そうだと思う」

 だからこれから先も、こんなふうにみんなで過ごしたい。言ってから、少し変な空気になってしまったなと思い、わたしは笑った。ごめんね、なんか恥ずかしいこと言ったかも。夏油くんは首を左右に振った。

「ううん。そういうところが、なまえの良いところだと思う。むしろそういうところに私は……」

 はく、と空気を吐き出すようにしてくちびるを開閉して、夏油くんは言葉を飲み込んだ。あ、まただ。わたしはまたなにか、彼に無理をさせてしまっている。咄嗟に、だらりと下がっていた大きな手を取った。

「え」
「あ、あの」
「……うん」
「い、言ってほしい……その、もしわたしがなにかしてしまっているなら、できるだけ直すし……」

 じわじわと、繋がった指先から熱が広がっていくような気がした。顔を上げることができなくて、握った部分を一心に見つめる。思わず手を取ってしまったけれど、嫌がってないだろうか。

「あー、その……違うんだ。今のはなんていうか、飲んだタイミングで言いたくない、みたいな。えーと、なんて言えばいいんだろう」
「お酒飲んでるときじゃ、駄目なの?」
「駄目というか、勢いで言ったと思われたくなくて」
「勢いでもいいし、そうじゃないってわかってるよ。夏油くんはいつも、本当にいつも考えてからわたしに言ってるってこと」

 なるべくはっきりとした口調で言うと、彼は迷ったように口元を大きな手のひらで隠した。こんなふうに戸惑った姿を見るのは珍しいかもしれない。しばらく間が空いて、ようやく手のひらが離れていく。

「そういうまっすぐで素直なところが、好きだよ。君の場合少し勘違いをしてしまいそうだから言うけど、恋愛的な意味で」

 へ。と間抜けな声が漏れて、するりと繋がった指先がほどけた。驚きすぎると腰が抜けたりするけれど、あれに近いような感覚だ。思考が停止して、なにも考えられなくなる。

「わかってくれた?」
「え、えっと、あの、はい」

 夏油くんがなにを考えているか、わたしには想像もつかなかったけれど、これは本当に想定外だった。わたしは前に見せた、あの躊躇った表情の答えが聞けると思っていたからだ。

「それじゃああの、いつもわたしになにか言いたげだったのは……」
「あれはその、ごめんただの嫉妬かな……。君があまりにも悟悟ばっかり言うから。もうそろそろ私のことだって名前で呼んでくれたっていいのにって。ごめんなんか本当、こんなことを言うつもりなかったんだ。なまえだって困るだろうし、それに……」

 いつもの躊躇った表情だった。考えごとをするような難しそうな顔。しかし次の瞬間には困ったようなそれに変わって、子供っぽいだろう? と彼は言った。ああなんだそうか。胸のうちに、すとんとなにかが落ちたような感覚だった。

「子供っぽくてもいいよ。むしろいつもわたしの手が届かないくらい大人だから、たまには見せて欲しい。全部じゃなくてもいいの」

 わたしが見てきたこと、感じてきたこと、全てではないにしても、きっと間違ってはいないのだろう。誰よりも聡いから、こんなふうにいつも理想的であろうとする。実際のところ、わたしだってそんなところから好きになったけれど、今のでそれが少しだけ変わった。
 いつも我慢させていると思っていたから言えなかった。負担になるかもしれない。そうでなくても、このまま四人で楽しくいられたら、それでもいいと思っていたんだ。

「でもやっぱり、もっと知りたいって思ったの。わたしも、傑くんのことが好きだから」

 こんなにも寒い廊下なのに、恥ずかしさのあまり体中熱かった。もうあと十秒も目を合わせていたら、燃えてしまうかもしれない。
 するとみるみるうちに傑くんの目が開いて、それからへらりと、今まで見たこともないような笑みを零した。素直に喜んでいるような顔だった。そんな顔、するんだ。ああまただ。知れば知るほど、彼のことが好きになる。冬の澄んだ空気のように凛として、けれども春のひだまりのように笑う彼のことを。
 翌日、お酒を飲んでないときに改めて告白してきたのもまた、彼らしいと思った。


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