まるで大空に恋焦がれているような
嵐は過ぎ去ったものの未だ雨は降り続いていて、窓ガラスについた雫が幾つも連なって下へと落ちていく。
「まるであの人のようね」
そう呟いてカーテンを閉じれば、背後から伸びてきた腕に絡め取られ、身動きが取れなくなる。首だけ動かして後ろを確認すると、燃えたぎる赤い瞳がふたつ。ああ、やはり今日はご機嫌ななめのようだ。
「だめよ」
宥めたって何の意味もないことを私は知っている。それでも黙っていられなかった。今日は私にとっても大切な日なのだから。
少しだけ緩められた腕に、ほっと息を吐いてからあの人に向き直る。顔を覗き込めば瞳の中の炎はごうごうと燃えていて、ぱちぱちと音を立てながら火花を散らしている。私は頬に両手を添えてゆっくりとあの人にキスを送った。
「今日は私の大事な日なんだから」
私の願いなど、あの人には届かないのかも知れない。それでも嵐のあとには必ず太陽の神が微笑むように、澄み渡るような大空が広がることを私は知っているから。
瞬間、噛み付かれるようなキスに少しだけ涙が零れそうであったけれど、私は静かにあの人の背に腕を回すことしか出来なかった。
2020.10.10
XANXUS生誕ツイート掲載