それからは、王様に会いたいっていう思いが、どんどん日を追うごとに強くなっていった。

 きっと、王様に会うことで一人ぼっちの寂しさとか孤独感とか、そういうものから解き放たれたいっていう浅ましい想いだって、あったんだと思う。

 純粋な想うだけの心じゃないっていうのはわかっていたし、純粋な想いを抱けない僕は、花嫁失格だと心底思う。

 でも、寂しさはどうしても止められなかったんだ。

 誰かに助けてほしかった。縋りつきたかった。……一人ぼっちは、いやだよ……。


 そして、孤独の中の光に縋りつきながら、4年の月日が流れた。

 僕は22歳になったけれど、まだ王様には会うことも姿を見たことすらない。

 夢を見始めてから十数年、夢に縋りついてから4年。それでもまだ姿すら見たことがない現実。

 僕はもう、希望に縋りついてはいたけれど、一緒にいられなくても、見つけてもらえなくても、ただ一度だけでも姿さえ拝見できたらって思うようになっていた。……もう、諦めていたって言ったほうが早いかもしれない。

 でもきっと、その姿を一目でも見ることができたら、それだけを心に残して過ごせるのにとも思っていた。そうしたら、完全に諦めることができるって。

 花嫁としてはその先が大切だから、それだけじゃダメなんだってことはわかってるけど、でも僕は自分が花嫁だからって世界のためになにかできるような人間じゃないって自覚していたよ。

 だからせめて、それだけでいいと思ってた。本当に自分のことしか考えていないよね、花嫁失格だ……。


 そんな花嫁にあるまじき想いを抱えていたある日のこと、僕に転機が訪れる。

 ……どういう理由なのかはわからないけれど、王様の一人が街にやってきたというお話を聞いたんだ。

 その話が耳に入ってきた瞬間、僕は駆け出していた。

「……っ」

 震えた。

 身体中から歓喜の震えが起こって、僕はまだ決まってもいなかったのに、それを自分の想い人である王だって思っていて、そのうえ彼に見えることができるんじゃないかってそう思い込んでいたんだ。

 歓喜のあまり頬は上気して、息も上がったけれど、それでも走り続けた。

 ただの一度でいいから、その姿を見て、その姿を心の底に焼きつけたい。

 彼の傍にいたいなんて高望みはしないし、平民である僕はそんな望みを抱くことすらもうできないけど、せめて、その姿だけ見ることができたら、きっと一生幸せの中で生きていけるとすら思う。

 諦めにもにた歓喜が、僕の中で渦巻いた。

 花嫁と伴侶である王様が結ばれて世界の繁栄を導くことを望んでいる民衆の方々にはもうしわけなくて、懺悔したくてたまらなくはなるけれど。

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