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 クソまりもの髪の毛は、きれいに脱毛できておらず、髪は全体的に短くなっていて、一部脱毛できているが、ところどころ髪の毛が残ってる場所があるという奇妙な髪形になっていた。憐れ。

「いい子だな、操」

「ふふん。あたりまえ〜。……仕方ないからぁ、あんたも手当てしてあげてもいいよぉ」

「くくっ、さんきゅ」

 いい子じゃねえよ、とか突っ込みたかったけど、なんとなくいい感じの二人を邪魔したくねえ。っていうかこいつらどうするんだよ。放置して帰ろうとするんじゃねえ!

 いまだに気絶したままのクソまりもと敵メンバー。いい加減誰か目を覚ませ。そう念じれば、思いが通じたのか、「ぅ……」という小さなうめき声が聞こえた。

 よし、こいつに全部押しつけて逃げよう。めんどくせえし。

「おい、てめえ」

「う……、くそっ」

「こいつらはてめえがどうにかしろ。手加減してやったんだ、それくらいできんだろ」

 うめいたのはあの取り巻き不良で、俺はそいつに全部押しつけ、志貴に目配せした。

 俺たちも帰ろうっていう意味だということを正確にくみ取った志貴は、こくりと頷き俺の横に並ぶ。

 ……と、一応クギ刺しとくか。こいつら想像以上にバカだからな。いくら今回のことがあったとしても、逆恨みでまたしかけてきそうだし。

「あ、今度仕掛けてきたら、そいつみてえになるかも、な」

「え……? なっ、か、楓!?」

「じゃあな」

 クソまりもの頭を見て絶句している不良を残して、俺たちはその場を後にした。


 その後、クソまりもはこの件がトラウマ化したらしい。

 学園で操を見ても、顔を真っ青にして逃げ出すようになった。まああたりまえだよな。

 そして、クソまりもが逃げ出す様を見た報道部が新聞を発行し、操の魔王としての立場は確固たるものになった。

 そのせいでますます操は怖がられてるけど、まあそれは仕方ねえというか。

 それに操には五十嵐っていうストッパーもいるし、なにより俺に平穏が戻ったから別にいいかと思うことにする。

「ラン」

「ん? おう、どうした」

「俺も」

 いつものように猫たちに癒され、頭を撫でていた俺を、志貴がじっと見つめてきた。その先は言わなくてもわかる。目は口ほどに物を言うからな。

「あー、はいはい」

「ん」

 撫でてやると、嬉しそうに気持ちよさそうに目を細める志貴。

 そんな志貴をかわいいなぁと諦めの境地で思いつつ撫でる俺だけど、こんな生活がずっと続くのもいいかななんて思った。

 まあ、操が暴れてるっていう報告をしに来た報道部のせいで、全部ぶち壊しになるんだけどな。おい、五十嵐はなにしてんだ!

 五十嵐が、操のストッパーになるどころか、こういうときは行動を助長させることしかないと気づいたのは、それからすぐだった。

 ……結局俺がストッパーでいるしかねえのか。胃を抑えながら、いつものようにそんなことを考えた。

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