操を怒らせてただで済むはずはねえし、ましてやあんなアルビノの人をバカにするような行動、許されるはずがねえ。

 クソまりもも、取りまきどもも俺に残ることはねえだろうけど、操が完膚なきまでに叩きのめすことだろう。

 それを見るのが楽しみだなんて、俺も大概だなぁと思いながらもクソまりもを見れば、腹を抱えたまままた汚い顔で泣きわめき始めていた。きめえ。

「うわぁああん! わぁあんっ、ひどい、ひどいよぉっ! 痛いよぉっ、さ、最低だぁ……!」

「か、楓、待て!」

「楓……! あなたたち、許しませんっ、覚悟しなさい!」

 走り去っていったやつらに、やっと静かになったと思う俺だが、冷静になれば楽しみな半面、めんどうなことになりそうだ……という思いも芽生える。

 だってなぁ、いくらクソまりもがふざけた発言したからって、操の怒りが尋常じゃねえからなぁ。

 正直、こんなに怒ってる操は初めて見た。

 笑顔すら忘れたらしい操に、正直俺ですら近づきたくねえが、五十嵐は相変わらずだ。尊敬する。まねはしたくねえが。

「……なに」

「あ? なんでもねぇよ。気にすんな」

 無表情のまま問いかける操の頭を、撫で続ける五十嵐。

 その五十嵐の手を跳ねのけることのない操。


 ……操が怒ってる一番の理由は、そこにあるのかもしんねえな。

 五十嵐はもう、操の奥深くに入りこもうとしてるのかもしれねえ。


 ……まあ、操のことだから、本当のことはわかんねえけど。

 俺は、そんなことを考えながらも、俺の隣で目をぱちくりさせて操の行動を見ている志貴の頭を撫でてやった。

「――嵐ちゃん、帰るよー」

「あ? ああ」

 薄っすらと操の顔に笑みが戻ったころ、そう声がかかり俺は同意する。

 五十嵐に対する操の態度も元に戻っていて、普通に頭を撫でる手を振り払っていた。

 俺は、「じゃあな」と声をかけて志貴に別れを告げるが、操は五十嵐を華麗に無視して俺の前を歩く。

 お前、さっきまでの殊勝な態度はどうした。あれはあれでこええが。

「ふんふーん、あは、あいつらの顔、ぐっちゃぐっちゃにするのぉ、楽しみだなぁ、ふふーん」

「……」

 操の言動からは、機嫌がいいのか? と感じるが、俺にはわかった。

 操、相変わらずすっげぇ腸煮えくりかえってんなァ。

 やっぱりいつもと違う操の怒りに、不安は大きくなった俺だった。

 クソ、このまま操をつれて教室に行きたくねえな。めんどくせえ。

 どうせさっきのできごとも報道部のやつらがすでに新聞でも発行してクラス中に配布してる頃だろう。

 クラスメートの反応を思い浮かべ、俺は操の背中を見ながらも、小さくため息をついた。

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