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校舎裏に来た瞬間、そんな光景が目に入った俺は、すぐにそこから立ち去りたくなった。
だってよ、いやな予感がするんだ。
逃げたくなるのを抑えて、俺はそのまま足を進めた。
その後ろを犬みてえについてくる志貴に、なんか可愛いなんて思ってねえぞ。
「あ! 嵐! 聞いてくれよっ、操は最低なんだぞ! お前だって騙されてるんだから、目を覚ませよっ」
「……あ?」
「きっと、埜亜も嵐もかっこいいから、自分の傍にいさせようとしてるんだっ、操は、人を顔で選ぶ最低なやつなんだぞ!」
「……」
おいおい、そりゃあ一体誰のことだ。
てめえのことだろうがそれ。
なにやら必死に言ってやがるが、どう考えても自分のことを言ってるとしか思えねえ言動。いつ操が人を顔で選んだんだよ。
もし顔で選んでたら、今まで操が外見がわからなくなるほどぼこった美形連中はどうなる。
内心つっこむ俺に対して、クソまりもは、自分に対して死刑通告同然のことを言った。
「――操みたいな平凡が、好かれるわけない! 可愛い俺が好かれないはずがないのにっ、どうせ身体を使ったんだろ! 最低だっ」
最低なのはてめえだクソ野郎が! なんてことを言いやがったんだてめえ。
そしてなにを考えたのか、いきなりもじゃもじゃな髪を掴むと、それを投げ捨てたまりも野郎。やっぱり鬘か。
その中にあった顔は、まあまあ美形……といった感じだが、この学園じゃ埋もれる程度。
というかその髪と目……アルビノを気取ってるみてえだが、間違いなく髪は染めてるし、その目もカラコンだろ。
本物を見たことある人間なら、絶対わかるほどの違いがそこにはある。
偽物の髪と目に白けた目で見る俺になにを勘違いしたのか、クソまりもは嬉しそうに続けた。
「嵐もわかってくれるだろ!? 俺、こんな髪の色と目の色だけど、頑張って、誰からも愛されるようになったんだ! だから、嵐だって俺のこと大好きなはずだろ!?」
いや、意味わからん。
どこからその話が出てきたのかまったくわからねえけど、クソまりも野郎の言いたいことだけは不本意だが理解した。
おそらくこいつは、自分が髪と目が普通の人と違う色で生まれてきて、大変な目にあった悲劇のヒロインだとでも言いたいんだろう。で、それでも頑張ってきた自分は愛されて当然……と。ふざけんな。
それを理解するのと同時に、その行動がひどく勘に触った。
だってなぁ、それ……ほんとにアルビノで苦しんでる人に対する侮辱でしかねえだろ?
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