もう俺は諦めることにした。

 なにをか?
 んなもん操を止めることに決まってんだろうが。


 操が、クソ会長を病院送りにしてからすでに数週間。

 あいつは相変わらず五十嵐に特攻をかけている。


 つうか、めんどくさくなったのか、あるいはむだなことに気づいたのか、操の野郎特攻かけるのをやめてたっつうのに、五十嵐のほうからちょっかい出すようになったんだ。

 それに対して青筋立てながら笑顔で特攻かける操。
 ……まじでふざけんな。空気読めよ。


 そんな日常に、俺が愚痴るのも仕方ねえだろ?

 いくら慣れてるっていっても、さすがに限界っつうもんもあるわけで。

「……あー、癒されんな」

 俺は、いなくなっちまった操を探すことなく裏庭にいた。

 俺が中庭に来ると同時に、いつものようにぞろぞろと現れる猫たち。

 あー、やっぱりこいつらといると癒されるなあ。

 地面に胡坐をかいて座ると、競うように乗ってきた猫たちに笑みがこぼれる。

 操といるとストレスばっかり溜まってくのにな。

 あいつには愛らしさとかほのぼの……とかそういうの欠片も感じねえし。

 ……今頃なにしてんだろ。

 やっぱり五十嵐に奇襲かけてんのかな。
 それとも、もしかして生徒会に……って、考えるな、俺!

 考えねえようにしてたのに、猫の頭を撫でながら、いつの間にか思考は操が今なにをしているかに脱線していく。

 やべー、一回考え出したら、まじで気になり始めた。最悪。

 まあ、操のことを心配してる……とかじゃねえけどな。

 むしろ、やつが与える被害を心配してんだ。

 ……なにもしてねえといいけど。

「……はあ、いてもいなくても、同じか」

 むしろ、あいつがいない分だけなにをしでかしてるのかわかんねえから、こっちのほうがストレス溜まるかもしんねえ。

 やっぱり少しでも探したほうがよかったか。

 いつもみてえに。

 そうすれば、操がなにかをしたら耳に入るだろうし、安心できただろうに。

 まあ、結局は見つかんねえで、同じようなことになるんだろうけどな。

 ……今からでも行くか?

「なあ、どうすればいいと思う?」

 思わず問いかける俺だけど、問われた猫は、「ニャァ」と可愛らしく鳴くだけ。あたりまえだけど。

 どうしようか、また考え始めたその時、ジャリという砂を踏むような足音。

 ……あ? 誰だ。

 足音がするってことは、志貴じゃねえだろ。
 あいつはいつの間にかいたりするからな。

 膝に猫を乗せたまま、警戒するように音がしたほうを睨みつける。

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