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「……なあに、編入生くん」
にっこりと笑った操が、首を傾げながらまりも野郎に聞く。
俺はそんな操に背筋に悪寒が走る。
まりも野郎は操の様子なんて気にしてねえ様子で、耳障りな声を張り上げた。
「楓って呼べって言ってるだろ! それに、なんで俺をおいて先に行くんだよっ、俺が一緒に行ってやるって言ってるのにっ、最低だ!」
……こいつはまじでバカなのか。
魔王にけんかを売るなんて、自殺志願者にしか見えねえ。
まりもの言葉を聞いて、さらに笑みを深くした操。
……やめてくれ、これ以上この魔王の機嫌を損ねるな。
巻き込まれは確実なことを心の中で嘆いていると、またうるさい声が聞こえ始めた。
「楓! こんなところにいたんですか」
「もうっ、探したよぉ、楓ちゃん」
「おら、さっさと生徒会室行くぞ」
顔だけしかいいところがないっていうのはこいつらのためにあると思うのは俺だけじゃねえはずだ。
やってきたのは、腹黒とか言われてる副会長に、ぶりっこ会計。
そしてクソ生徒会のボスであるうぜえ俺様野郎。こんなやつが生徒会長なんて、世も末だな。
……あー、隣の操から、「……ふふ」と小さな笑い声が聞こえてきやがった。
それに気づくはずもねえ、生徒会どもとまりも野郎は、いつもの寸劇を繰り広げ始める。
見飽きてんだよいい加減。
まりもの争奪戦なんていう、興味が欠片もわかねえもんを見せられても、なあ?
目の前で繰り広げられるものをイライラしながらも見ていたわけなんだが、そのうちまたキャストが増えやがった。
「楓!」
「一緒に行こうって言っただろ?」
一匹狼とか言われてる不良。
こいつはなぜか俺をすげえ敵視してやがる。なんだ、俺がこいつの上を行く不良だからか。でもそれは大半が操の功績だ。
そしてエセ爽やか。なんでエセかって? 本物の爽やかは嫉妬にまみれた醜い顔を曝したりしねえだろ? 腹黒でもねえはずだし。
キャストが増えたところでやることは変わんねえし、まじで飽きてきた。
操もそろそろ限界だろうし。
……はあ、俺がなんとかするしかねえのか。
俺はため息をつきながら、意識して低い声を出して目の前でうぜえ劇をしてやがるやつらににらみを利かせる。
「ちっ、うぜえよ、てめえら。茶番は余所でやれ。不愉快だ」
「なっ、なんですか、野蛮な不良の分際で!」
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