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困った顔で笑うハルさんにどうしても伝えたくなって、僕は素直な感情を口に出した。僕の言葉を聞いたハルさんはなぜかピタッと固まってしまう。
……僕、変なこと言った?
少し不安になったところで、ハルさんの身体が小刻みに震えた。
「か……」
「か?」
「かわいい〜! なにこのかわいい生き物〜、超やばい!」
「え、あの……」
いきなり抱きこまれ、両手でもみくちゃにされる。いきなりどうしたんだろう?
周りもハルさんのいきなりの行動に驚いたのか目を見開いている。
……また注目されて視線を浴びてるのに、さっきみたいに怖くならないのはなんでだろう?
浴びている視線はさっき以上な気がしないでもないけど、不思議と怖く感じない。それどころか、ハルさんの腕の中はなぜかひどく安心した。
……守られている。この人なら大丈夫、そう思った。
「……」
すりっと無意識に顔をハルさんの胸板にすりつける。
「……」
ハルさんの服の裾を両手で握りながらそのまますりすりしてると、なぜかハルさんが無言になった。
どうしたのかなあ? と思ってハルさんを見上げると、そこにはすごくやさしい顔をしたハルさんがいて。
僕はまた安心してしまったんだ。
「……おい、お前らいい加減にしろ。こいつらも困ってんだろ」
「……ちょっとお、いいところなんだから邪魔しないでよ〜」
そんな僕らを止めたのはやっぱり伊瀬先輩。先輩は呆れた顔をしながらもどこか楽しそうだ。
周りの不良さんたちもそんな感じ。
……? なんで嬉しそうなんだろう。
僕は首を傾げる。
そのまま顔を上げた僕の視界の端に翔太と柊先輩が移った。
相変わらず二人は僕から見たらすごくラブラブだ。
今だって、いつ頼んだのか知らないけど、柊先輩が翔太にケーキを食べさせている。翔太はそれを真っ赤になりながらも拒絶することなく頬張っていた。
「……ラブラブ」
「ん? ……あー、そうだねえ」
「……お前らがそれを言うか」
思わず口から出た言葉だったけど、ハルさんはにっこりと肯定してくれた。
伊瀬先輩は呆れたように言ったけど、なんのことだかわからない僕は、ただ首を傾げていただけだった。
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