答えの出た相談



「――ふぅん。そんなことあったんだぁ? ……でもさぁ海、それ、僕に言うってことはもう自分の中で答えが出てるんじゃないのぉ? 僕に相談したいんじゃなくて、自分の考えが正しいのかそうじゃないのか、確認したいだけでしょぉ」

 寮の部屋に帰ると同時に、今日会ったことを椿に相談すると、そんな言葉が返ってきた。

「……そ、そうなの、かな?」

 椿にそう言われれば、そんな気がしてくる。僕は椿に、空のことを相談したいだけかと思ってたけど、本当は自分の中で答えは出ていて、ただそれを椿に確認したかっただけなのかな?

 自問自答すると、僕は自分に対して頷くことができる。

 ……僕は、本当はわかってるんだ。空はきっと僕が思ってたほど正しくなんてないってこと。というか、この世に全部が正しい人なんているはずがないってこと、そんなこと知ってるんだ。

 ただ、空は正しい、そう自分に言い聞かせたかった。

 そう思っていれば、僕は自分が両親にも友達にも好きになってもらえない理由を正当化できたから。

 ……まあ、今は僕にも椿って言う大切な友達や、大好きな人たちもできた。だからこそ僕は、今までのそんな自分の感情を、冷静に分析できるんだけど。

 僕は、こんな自分を好きになってくれて、大好きだと言ってくれる椿や新さんたちを思い浮かべて、薄っすらと笑みを浮かべる。

 皆のおかげで、僕は空と向き合えるくらいには、強くなったんだなぁ。純粋にそう思った。

「……なぁに可愛い顔してんのぉ」

「え? なにが?」

「海ってばすごく可愛い顔してさぁ……。まったく、そういう顔は会長の前でしてよね! 僕にとっても目の保養だけど、そっちのほうが保養になるから! むしろ僕の栄養分なんだよぉ」

 ぷんぷんと目を吊り上げる椿だけど、そんな椿の顔こそ可愛いと思うのは僕だけ? っていうか僕は可愛いなんてないよ?

 相変わらず椿は可愛いの守備範囲が広いなぁと感心しながらも、僕は椿に笑いかけた。

「ふふ、椿が僕の友達でよかったなぁって思っただけだよ」

「……な、な、なに急にっ、いきなり言われたら心の準備できないでしょぉ!」

 ぎょっと目を見開いた椿は、次の瞬間真っ赤になる。わぁ、リンゴみたいだよ椿。

 思わず目をぱちくりさせる僕に椿は、「もう! 僕のこと辱めてなにが楽しいのかなこの子は! というか無自覚を僕に発揮しないで! 心臓がもたないからっ」とぼそぼそと呟いた。

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