R15/こへ長前提の食満長




降り出しそうな夜だった。名を呼べば振り向くだろう距離で声をかけた。なのに振り向く事無く長次は角を曲がろうとしたから、俺は慌てて手首を握った。鍛錬後の長次は汗だくだったけれど、その背中で目一杯息を吸えば天国にでも逝けそうな程の多幸感で、男っぽい汗と砂埃の混じった匂いに興奮した。

「長次、ちょっと」

胸をまさぐりながら声をかけると、長次は嫌そうに急いでると言った。小平太かとは言わずに黙って抱きしめると、長次は本当に嫌そうな顔をした。泣きそう、分かってる、長次は俺の事を好いてない。
そう思うとさっきまでの興奮が嘘みたいに憎悪に変わって、口角がやたらと上がるのが分かった。俺は長次の手を引くと部屋へ無理矢理押し込む。長次は何も言わずにただ俺を睨んだ。馬鹿だなあ長次お前に睨まれても怖くないんだよむしろあれだ息が上がる。

都合良くそこには布団が敷いてあった。二組の布団の匂いを比べて小平太のだと思われる方に長次を押し倒す。気持ち悪いが仕方ない、長次の匂いに包まれるなんて脱がせる前にイきそうだから。そんな勿体ない事は避けなければならない。

「いい匂いだな」

汗の退いた身体を撫で回す様に見ながら、水に濡れたみたいにぺたぺたする装束を脱がせながら。脱がせた装束に顔を埋めると長次の匂いでいっぱいになった。「止めてくれ」なんて悲願は聞こえない。
塩っぱい身体に舌を這わせれば、長次はひくひくと肩を震わせる。首筋から胸元にかけて舐めあげると、長次は諦めたのか気持ちいいのか目を瞑って浅い息をする。胸の突起に指を這わせた所で、長次は歯を噛み締めながら言った。

「鍛錬…してきた所なんだ。風呂だけ、先に行かせてくれ…」
「何言ってんだそれじゃ意味無いだろ。大丈夫、終わったら小平太と入ればいい。」
「…そういう…事ではなくて」

じゃあ目瞑って小平太の顔思い浮かべてろよ、そう言った途端に長次の顔が真っ赤になった。

「そういうのは…」
「一緒だろ、長次が何時もしてる事と。まあ俺は長次のよがる姿を考えるだけで何回でもイけるんだけどな。」

好きな奴に笑顔でそんな事を言える俺はなんてタフなんだろう。長次は知らんとだけ呟いて、それからゆっくり目を閉じた。俺と小平太ってどっちが上手いの?耳元で呟くと長次は横を向いた。

「小平太の事思うだけで大きくなるんだな、面白いな」

下半身に手をかけるとそこは少し濡れていて、汗か何かは分からないけれど見るだけで物凄く興奮した。装束や髪の匂いに溺れる。長次の匂いがする。
舐めようかなあ、でもまず内股からかな。至る所にある古傷の上に舌を滑らせる。こそばゆいのか震えながら声を抑える姿が可愛くて、つい過剰に舐めてしまう。足の先から付け根まで何度も舌を這わせれば、長次は涙目で俺を見た。
そろそろいいかな。自分のよりも大きいそれに触れると、そこは余計に熱を帯びた。

「本当は好きなんだろう」

この行為かそれとも俺の事か。あえて曖昧に尋ねると、長次は耳まで真っ赤にしてこくりと頷く。

「…好きだ」

何時も以上にか細い声が鼓膜の奥で何倍にも響いた。長次、俺も好きだ。お前もこの行為も引っくるめて全部。産まれたままの姿で汗を流しながら、愛してるだなんて嘆くのは馬鹿みたいだけれど。それでも言わずには居られない。
好き、好き、そうやって馬鹿みたいに呟くのが幸せだった。


がらり


束の間の幸せに敵の襲来!慌てて戸の方を見ると、そこには小平太が突っ立って居た。状況を把握仕切れていないようで、ただただ立ち竦んだままの。
「は…?」
思わず息が洩れる。そりゃあ困惑するよな。風呂から帰って来たら同室の男と変態がくっついているんだ、それも全裸で。

(ああ、嫌な奴が帰って来てしまった。束の間の幸せももう終わり。)


「っ。こ、小平太…」
「…そんな…そんな目で私を見るな、長次」
「…小平太っ」
「そんな格好で私の名を呼ぶなよ、馬鹿長次!」

そりゃ正論だ、と他人事みたいに傍観する俺を小平太が睨んだ。人を強姦魔みたいに見るな。これは同意の上の行為なんだ、と言いたかったが止めておく。
俺に触れられながら長次は泣き出した。忍者がこんな事くらいで泣いてどうする。

「…やめ…てくれ、食満、っ」
「何言ってる自分が望んだくせに」
「…違、っ」

はあはあ、はあ
肩で呼吸する長次、嗚咽する長次、小平太に見られながら達してしまった長次。
可愛いなあ、好きだよ、俺も。

そう言い残して長次から離れる。有りったけの体液に塗れた長次を置いていくのは辛いけど。

「まだ突っ立ってたのか」

俺は帰り際に小平太の頬で手を拭いた。お前の好きな長次のだ、とだけ伝えて。




「長次、」


誰でも良い訳じゃないんだ(たぶん)


食満さん顔に精液塗らないで下さい

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