小平太×長次←食満
食満と長次が別れる話



手を繋いだだとかそう言うのを聞いて苛立った。
恋仲に成ると言う事は前々から聞いていたし、たとえ小平太と恋仲に成ろうとも構わないから俺とはこのままの関係で居てくれと悲願したのも自分だ。
でも実際問題、長次と手を繋いだだとか夜遅くまで夢を語っただとかそう言う話を聞かされると胸が裂けそうだった。どうして苛立つんだ、俺の方が勝ってる筈なのに。

むしゃくしゃした気分のまま廊下をのし歩いた。ふと視線を上げると目の前を通る影。照れたように笑う小平太と何時ものように無表情な長次を見て、俺は思わず視線を逸らす。

「委員会の事で話がある」
俺が小さく手招きすれば、先に行く、と小平太は手を離した。



部屋に連れ込んだ長次の手を無言でとる。いつも冷たいその手は人の暖かさを持っていた。
「暖かいな」
自分で言った言葉に涙が出そう。まるで立ち入る事の出来ない二人の世界に、俺は何時まで割り込むつもりだろう。愛だの恋だの下らない、ただ好きだというだけで無理矢理付き合わせてきたのは俺だ。本当は長次が迷惑がっている事くらい知っている。

「用事は何だ」

深い沈黙の後、長次は重い口を開いた。涙が溢れてしゃくり上げる様な息遣いの俺を全く無視して。それが長次なりの優しさなんだろうかなんて思える程大人ではなくて、ただ霞む視界の中で、ぼんやりと長次の姿を確認した。

「…もう止めよう」

抱きしめても何をしても、小平太の暖かさに負ける。俺がどんなに思っても、長次は決して心から笑わない。

「どうして」

「長次と小平太が仲良くしてるのを見てるのが俺の幸せだって最近気付いてさ。お前の幸せそうな顔見てるのが俺の幸せだから、かな。」

口から出任せ。嗚咽しそうに成るのを必死に堪えて、自尊心を確立する事くらいしか今の俺には出来なくて。本当は好きで堪らないなんて言えなくて。

「…そうか」
呟く長次の顔は、もはや視界に入らなかった。


お前にとって今までの俺は何だったんだ。一方通行の思いは常に交差した。ただ早過ぎた関係だけが俺達をつなぎ止めた。

無理矢理物影に連れ込んでは馬鹿みたいに好きだと言った。好き、長次が好き、だから、なあ、お願い。そう言えば頬を染めて答えて、笑って受け入れてくれた。触れて喘いでを繰り返した頃に、俺達って動物みたいだな、そう言うとむっとした表情で予想外の言葉を返された事もあった。気持ち良いからするんじゃない、好きだからお前に触れたいんだ、と。そうだその頃俺はどうしようもない馬鹿で、そんな台詞を煙たがった。愛だの恋だのどうでもよくて、ただ黙って俺を受け入れてくれそうな奴を探したら長次だったって言うただそれだけなのに。

溢れる涙を長次の手が拭った。
その暖かさが幸せだと、気付くのが遅すぎた。

まだ間に合うのだろうか、またあの頃のように好きだ好きだと言えば、長次は困ったように振り向いてくれるのだろうか。
しかし今更戻ってきてくれなんて言える訳も無くて、それから無言で部屋を出ていく音にまた涙した。


酸素不足で窒息死

都合のいいように使ってたのにいつの間にか好きになってた。空気みたいな存在は失ってから大切さに気付く。ああ、今日も呼吸すら出来ない。


何だかんだで食満は長次が好きならいいなあ

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