最近長次の調子が悪い、と思う。何時に無く無口だし、楽しそうじゃない。もしかして構いすぎたんじゃないかと不安になる。でも距離をとろう、なんて思っても実行できないくらい好きで。
そういえば最近、楽しそうに本を読まなくなった。どうして?何かあった?そう思うと私は居ても経っても居られなくなって、図書室に居る長次の元へ駆けつけた。理由を説明すると、長次は困惑した表情で私の顔を見て、それからゆっくりと口を開いた。つまらない話かも知れないけれど、と前置きをして。

「…宇宙の始まりは137億年前だと、最近読んだ本で知った。」
第一声は思わぬものだった。長次は宇宙と戦っていたのだ。
困惑する私を尻目に、長次はすらすらと話を続ける。

「人類は世界を汚染し、全てを知った現人神であるかのように振舞うけれど、地球や宇宙規模で考えると、物凄く小さな事なんだ。この果てしなく大きな地球でさえ宇宙の果てから見えないくらい小さなもので、其処から考えると、自分の命なんて塵の様だと思い、生きているのが辛くなった。課題に追われ委員会で過ごすこの日々に意味はあるのだろうか、と。」

ああ、そんな事を考えていたのか。私の頭は長次とバレーボールの事でいっぱいだというのに。この同級生はもしかすると見た目以上に大人なのかもしれない。でもその専門書を読むのは私達にはまだ早い、と本を読めない私が言います。

「長次は真面目すぎるんだ。大体宇宙の始まりが137億年前だとして、それが何だ。それより目の前の課題に取り組むべきだと私は思う。本と言うのも困ったものだな。知識を与えてくれる分にはいいが、長次を余計な不安に陥れるなんて。それに意味なんて無くていいよ。私は馬鹿だから宇宙の始まりなんて知らないし、知りたいとも思わないけれど、長次の事なら誰よりも分かっているつもりだ。それでいいんじゃないか。宇宙規模で見た長次は小さくとも、私の中の長次は銀河よりも大きい。私はそんな長次が辛い顔をしているのは嫌なんだ。だから、」

そういうと手元の本を奪い取り、勢いよく本を投げ飛ばした。図書室の窓から飛び出したそれは放物線を描き、華麗に着地した。運動場のど真ん中に。
唖然とした長次にピースサインを向ける。それより、たまには私とバレーでもしないか?笑顔で尋ねる私の前には、鬼の形相で笑う長次が居た。

「…本を取りに行ってから、だ。」


何億光年先の光よりも、
 


(現パロ/こへちょ)

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