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 愛しの王子様!







ああ、小さなものを愛でたい気持ちはこんな気持ちなんでしょうか…私は今とても彼をぎゅってしたい気持ちで一杯ですし、何よりお話したり一緒にお出かけや一緒にお食事だってしたいくらいなんですが…でも私にだって立場というものがありまして、私は彼とは違いとても素敵なお父様の娘なので庶民と馴れ合う事は禁じられており、会いに行く事はまるで船も飛行機も使わないで北海道に行けと言われてるようなものなんです…ああ、なんて悲しい現実、なんて辛い立場なのでしょうか。

なんとしてでも私のこの気持ちだけでも伝えて欲しいものなんですけれど、今彼はどこに居るのかさえ分からないのですから、困ったものです。

執事の彼に聞いても取り合ってくれません。

私のお世話係なのに役立たずです。



「はぁ…会いたい。」



白馬の王子様とか目覚めさせてくれるカッコイイ王子様とか塔のてっぺんから連れ出してくれる王子様とかゲームみたいにかっこよく登場するヒーローやバイクに乗って現れるヒーローなんかより今は彼だけに会いたい気持ちで一杯な私の胸の内を誰か察してください。

願ったって、恋愛ゲームみたく上手くはいかないものだと知っています。

ほら、今だってお稽古の時間だと役立たず執事が言ってきました、面倒です。


お稽古場所に向かい、お稽古をしていたのですが今日は調子が悪くて特別に今日一日部屋でおとなしくしていなさいと言われました、ラッキーです。



部屋に入って執事を部屋から追い出し、私はお父様から買ってもらった可愛らしい携帯を開いて待受を眺めます。

ああ、なんてかっこよくて可愛くて素敵な方なんでしょう…彼は今何をしているのか気になります。


私は意を決して部屋から飛び出しお父様の書斎に入り、お父様になんとか会えないかどうか頼み込みました。

私の完璧な涙にお父様はやっと彼に会う事を許してくれたので、執事に彼のいる場所へと車を走らせて向かうように言って向かいました。

早く会いたいです、私の王子様…!!



目的の場所に着いて、私は早速彼を探しました。

今彼はお稽古中らしくて煩くしてはいけないと言われたので静かに中に入り、彼のいる場所へ向かいました。


やっと見付けて、私は窓から中を覗くと沢山の人が何かを書き取っていました。

ちょうどお稽古終了を知らせるチャイムというのが鳴って沢山の人が部屋から出て行きました。

私は見計らったように中に入って、一目散に彼に飛び付きました。



「会いたかったですーっ!!」


「な、なんだあ!?うわっ!」



私が勢いよく抱き着いたせいでそのまま倒れ込んでしまいましたが、私は気にする事なく抱き着いたままほお擦りをして会えた喜びを噛み締めました。



「ああ…ずっと会いたかったです、来栖さん…!!」


「わ、分かった…会いたかった気持ちはよく分かったから、はーなーれーろー…っ!!」



起き上がって私を引きはがして、一息付いた後『この馬鹿!』と叱られてしまいました、なんででしょう…私は何をしてしまったんでしょうか…?

いきなりの事で目を見開いたまま来栖さんを見れば溜め息をついた後まるでお母様みたいにお叱りモードスイッチオンで、私を叱り始めました。



「お前この間も会ったってのになんでわざわざ遠い所からここまで来るんだよ!なんの為にアドレス交換したんだ、全く…。これだからお嬢様は…。」


「むぅ…。」



来栖さんのお叱りに少し膨れながらもそっぽを向けば来栖さんのお友達と思われる方と目が合いました。

暫く見詰めていたら、私の傍に来て手を取り、手の甲にキスをしました。



「こんなに美しいレディとは初めて会ったよ。はじめまして、俺の事はレンって呼んでくれて構わないからね。」


「はい、私は…」



と、自己紹介をしようとしたら後ろから来栖さんがギュッと抱きしめてくださいました。

ああ、嬉しくて泣きそうです…!!


そんな事を思っていたら来栖さんが『こいつは俺のだから気安く触んな!』とレンさんの手を払って、まるで毛嫌うように手で追い払う仕種をした。



「お前もあまり相手に気を許すなよな…。」


「……はい。」



ああ、たったこれだけで彼は私を大切だと思ってくれているんですね…。

いままで出会った優しい方より、やっぱり私は彼が大好きです!

白馬の王子様よりも…えっと、まあその…沢山の王子様やヒーローなんかより、ずっとずっとかっこよくて素晴らしくて大好きで可愛くて大好きです!!






「来栖さん!私、来栖さんのお嫁さんになりたいです!!子供は二人欲しいです!」


「ぶっ!!」








 
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