捧・頂小説 | ナノ



あなたの隣









“私の定位置”

それは18年前も、今も変わらない。
不器用だけど、冷酷だと勘違いされやすいけれど、本当は優しい私の想い人。


君の隣が私の定位置。











『…ジューダス君。君はどうしてこんな分厚い本を読むんです?』


旅の、束の間の休息。

というのも、ふられマンことロニ君が物凄く好みな女性に冷たくあしらわれたとか。いつも同様にナンパに失敗したとか。ショックが大きすぎて立ち直れないとかとか…。


とにかく、色んなことが積み重なって、ショックで寝込んでしまった、らしい。


出発するにも、ロニ君を置いて行くわけにはいかないので、ロニ君が立ち直るまで、こうやって各々時間を潰している。


よくある事なのに、何故今日のロニ君はそんなにも深刻そうなのか、私には不思議でならなかった。


今は暇をもて余している私が、ソファーの隣に座り、本に読み耽っているジューダス君にちょっかいを出しているところだ。


「…ふん。わかるだろう?十年余りの足りない知識を補完するためだ。」


だが、彼は旅をしている間、本棚や図書館があればすかさず読んでいない本をチェックし、読み漁っている。

かなりの本を網羅していると思うのだが。

『そうは言ってもずっと読んでたら疲れちゃいますよー』


「ふん。疲れん。」


『目、悪くなっちゃいますよー』


「ふん。悪くならん。」


私のちょっかいにもジューダス君はちゃんと応えてくれていた。だが、目は本の文字を追っている。


『…骨仮面が外れなくなりますよー』


「ふん。なら…って、仮面は何の関係もないだろう!」


しかし、さすがのこのちょっかいには突っ込まずにはいられなかったらしい。
本を読むのを止めてしまった。


でも、何の根拠もないことを言っていることについては突っ込みはないのだろうか?

え、それ以前の問題だって?
ああ、それは申し訳ない。


「…はぁ。」


彼は大きな溜め息をつき、本を閉じた。どうやら本を読む気が失せてしまったらしい。


「お前は変わらないな。18年前から。」


『そうですか?』


ジューダス君が私のことをどのように捉えていたかいささか疑問に思うが、本当にそうだと思う。


一途にあなたを想っている。
それは今も昔も変わらないから。


『ジューダス君は変わりましたよね。』


「僕が?」


私の発言を意外に思ったのか、彼は不意を突かれたような、そんな驚いた顔をしている。


『少しですが、表情が緩くなりました。』


「…それは喜んでいいのか?」


『いい意味ですよ?』


言い方が悪かったのだろうか、ジューダス君は心底嫌そうな顔つきになった。


『言い方が悪かったですね…。厳しいところは変わりませんが、厳しい中にも優しさを出すようになりました。特にカイル君には。…気づきませんでしたか?』


「別に、優しくなどしていないが。」


私が言った言葉に、ジューダス君はさらに顔をしかめた。


『ふふっ。無意識にそうなっているんですよ、きっと。昔から見ている私が言うんです。間違いないですよ。』


「…ふん。」


ジューダス君は照れたのか、私に背中を向け、再び本を手に取り読み始めた。


でもここからでは、ジューダス君の表情は見えない。もしかして…照れたのではなく、怒らせてしまったのだろうか?


私はジューダス君の背中に自分の背中を重ね、軽く体重をかける。


『ジューダス君、怒ったんですか?』


「……ふん。怒ってなどいない。」


少しの間を空け、ジューダス君は答えた。


『なんですか、その間は。』


「別に。」


『気になります。』


なんでもないのならはっきり言ってくれればいいのに。
何か含みのある言い方だ。


「……怒ってはいない。ただ、」


『ただ?』


ただ、なんだろうか?
私はその先が気になり、彼の方を向く。
彼も軽くこちらを振り向き、続けた。


「…、今も昔もずっと隣にはアリスが居てくれたのだと思うと…」


『…思うと?』


先を促すように、私は少し身を乗り出す。

「っ…。そ、そう思っただけだ。」


『……。』


私が期待したことは、彼の口から出ることはなく、少し寂しく感じた。
でも、


『私は今も変わらずジューダス君の隣に居られることが嬉しいです。幸せです。』


私の素直な気持ちをそのまま言葉にする。自然と笑みも溢れた。


「っ…!」


ジューダス君は驚いた顔のまま固まってしまった。


今日は珍しいな、彼のこんな顔が見られるなんて。


『えいっ。』


スポッ。


固まったまま動かなくなったジューダス君の仮面を掴み、外してみた。


「……!いい度胸だな、アリス。」


『え、へへっ…』


勢いで外してしまってから、後悔。
素晴らしい笑み(普通ありえない)を携えながらそろりそろり、ジューダス君が近寄る。


その後、しばらくジューダス君とふたりで、し烈な鬼ごっこを繰り広げていたとかどうとか。









「おーい、ふたりとも。ロニが復活したよー…って、あれ?」


私たちがいる部屋にカイル君がやって来る。そんなことに気づかない私とジューダス君は、


「へへっ。仲がいいなぁ〜。」


ソファーの上でお互いがもたれ掛かるようにして、眠っていた。




あなたの隣
(あなたの隣が落ち着くの。)
(お前の隣が落ち着くんだ。)


*END




どうだったでしょうか…?
閃くままに書き連ねてみました…!
気に入っていただけたら光栄です…!


なぎさ様に捧げます!


それでは(^o^)



なつめ様へ
こんな素敵なお話をありがとうございます!
終始ニヤニヤが止まりませんでした…。
ジューダスの素っ気無さからの優しさにキュンとしました、可愛かったです。
この度は相互ありがとうございました!
なぎさ





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