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「どう思うこへ」
「うーん、お前に興味がないだけなんじゃないか?」
「…!!」
「あ 間違えた」



お前の体に、興味がないんだと思う。と小平太は微笑して絵美を見た。絵美は表情を歪ませるとぶつぶつとなにか言っている。あいつらしい。絵美は自分と恋仲である。絵美のことは好きだしそれに嘘ではない。ただ、こうも軽々しく忍たま長屋に来てもらわれては困る。あいつには女であるという自覚が足りないと思う。



「わたし、そんなに貧相な体してる?」
「んーよくわからんが私はもうちょっと胸がほしい」
「お前の好きな体格など聞いていない」
「ははは!まあ気にするな!」
「むー」



気にするなと言われても気にするのが人の性なわけで。絵美はなんだか納得してないような顔つきでぐちぐちしている。小平太に言っておくが絵美はそこまで胸がないわけではない。ちゃんとある。(こんなこと言ったら怒られそうだ)くのたまとはいつもあんなことを考えているのだろうか。だとしたらふしだらだ。



「…そんなに交わってほしいなら言えばいい」
「こへ、あんた長次を馬鹿にしちゃいけないわよ。わたし、忍び込んだことあるけど長次ったらひとことしか言わなかったのよ?」
「なんて言われたんだ?というかあれは忍び込むというより訪問、って感じでばればれだったぞ」
「だまらっしゃい。長次、いいよって言ったらひとこと、絵美とはやだ」
「おお、絵美は誘うときでも色気ないのか」
「はあああ?黙りなさい、こへ!それに色気はある!な、なきゃ困る!」
「くのたまなのになあ、いたいぞ、それ」
「…実習でちゃんとできたもの。色気がないってことはないはずなのー!」



だいたいそういう相談は忍たまにするものじゃない。くのたまはくのたまに相談すべきだ。そんなに興味があるのか。それにしてもこの部屋に来たということは私に話そうだなんて考えていたのではなかろうか。…なんとふしだらな。



「もっと女らしくすればいいのかしら…」
「んー、長次だって男だ。いつかは来るだろう」
「…それが実習での、違う女とだったらどうすればいいのよ」
「なんでそんな難しく考えるんだ?細かいことは気にするな!」
「もうこへ話にならないー!わっ、」
「お、っと。なんだ?私を誘ってるのか?」
「違うわよ!畳が滑りやすくなってるの!」



そうだ、そんなに交わりたいなら他の忍たまを誘えばいいのだ、と今まで思っていたが実際そうなるとやはり違うらしい。小平太に流れ込むように体制を崩した絵美を見ているといらいらする。小平太、いますぐそこをどけ。殺気がだだもれになってしまった今となっては隠れてるのもばからしいが、なにやら絵美は気付いてないらしい。小平太が体制をなおした、と思えばなんだあれは。私でもそんなことをしたことはない。無性に、いらいらする。



「まあ、そうへこむな!長次にもなにか考えがあるんだろ」
「…わたしとどう別れよう、とか?」
「なんでそういう考えになるんだ」
「…わかんない。もう帰る」
「長次は?待たないのか?」
「いいんじゃない?長次はわたしに興味がないんだから」
「…じゃあ来てたことだけは言っておくぞ」
「ありがとう、じゃ」



ずんずん、と絵美の足音が聞こえて、遠くなって行く。いつもこうだし、いつも泣きそうな顔して私のところに来るけれど、絵美は一度も「別れよう」とは言わない。だから、こういうことをするのだとあいつは早く気付くべきだ。まあ、そんな所も好いているが。




私のことしか、考えてくれるな




まさかの長次視点。これ…長次じゃない…
100119 星羅