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サマー・リマインド



「あ!つわぶき、その頭!」

トイレから帰ってきたつわぶきを燐が指差す(するとしえみに「人を指差すのはよくないよ、燐」
と注意された)。彼女は前髪を燐と同様にヘアクリップで止め、額を出していた。

「あぁ、うん。燐の見て、よさそうだなあって思って」

つわぶきはいつもの定位置、燐としえみの間に座る。
燐はいつもよりハッキリと見える彼女の顔をついまじまじと見てしまう(それと、なにやら
顔が真っ赤な勝呂が見える)。

「変かな?」

燐の視線が気になったらしいつわぶきが言う。―――変なんてことはもちろんない。
似合っているし、ぼぉーっとしている彼女の少し暗い印象が明るくなった気がする。
そしてなにより、

「いや、変じゃないぜ。なんつーか、その、」
「ううん!全然変じゃないよ!可愛いよ、つわぶきちゃん!!」

可愛いなんて恥ずかしくて言い淀んでいた燐を置いて、しえみがハキハキと答えてしまった。
先を越されたと燐は内心悔しがるが、やっぱり恥ずかしくて言えない。

「嬉しいな、ありがとう」

そう、つわぶきは笑う。・・・と言っても、彼女と接する機会が少ない者から見れば
無表情に見えるだろう。しかし、高校のクラスも一緒なこともあって、燐にはつわぶきの
今の気持ちが分かる。可愛いと言われて喜んでいる。
クールな雰囲気はあるものの、やっぱり彼女も女の子だ。

「あ、そういやお揃いだな、つわぶき!」

燐は自分の前髪を指差した。特に、他意はない一言だった。
けれど、つわぶきにとっては特別な意味を持っていたようだ。

「お揃い・・・」

彼女は一度繰り返し、それから、

「えへへ、お揃い」

誰が見ても分かるほどに笑った。その初めて見る笑顔は、とても無垢で清らかで、幼い子どもの
ようだった(勝呂が「奥村ぁ!やっぱそれ返せや!!」と喚いているが聞こえない)。
燐の顔は途端に熱くなり、前髪を下ろして恐らく赤くなっているであろう顔を隠したくなった。
でも、出来なかった。



2015.1.22