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セオリー通りの出会いなのか



白状してしまえば、彼女は好みど真ん中だった。



―――入学式、それから最初のHRも終わり、このあとは寮部屋を確認して、
そうしたらいよいよ、勝呂竜士にとっての待ちに待った時間がついにやって来る。
こちらの学園生活は仮であり、後々向かう"祓魔塾"こそが、勝呂がこの学園へ
入学してきた目的だ。

「いよいよですね、坊」
「おぅ」

隣に並んで歩く子猫丸に、勝呂は短く答える。

「女の子がいっぱいいるとよろしいなぁ〜」

子猫丸とは反対側の、勝呂の隣を歩く志摩が実に締まりのない顔を作る。

「志摩さんはまたそうやって・・・」

いつものごとく鼻の下を伸ばす志摩に、子猫丸が苦笑する。
相変わらず緊張感のない奴ではあるが、やる時はやる男だ。目を瞑っておく。
・・・虫関係となると全く役に立たないが。

勝呂は真っ直ぐ前を向く。
―――サタンを倒す。その目標に向かっての第一歩が、ここから始まる。
さっさとこの教科棟を抜けて寮へ行こう。
金持ちがと内心で悪態をつきつつ、無駄にデカくて広い建物に、イライラしながら
勝呂は歩を速める。

―――そして、そんなイライラからくる不注意のせいか、廊下の角を曲がった
その拍子に、人と接触してしまった。

「うおっ」
「わあ」

自分の声と、もう一つ、いまいち覇気の無い声が上がる。
勝呂の方は大した衝撃ではなかったのだが、相手、女子生徒の方は今ので尻餅を
ついてしまっていた。自分にも非があるので、勝呂は手を差し伸べる。

「・・・すまん、大丈夫か?」
「大丈夫、です。こちらこそ、ぼぉーっとしてたもんで、ごめんなさい」

そう謝りながら彼女は勝呂の手を取って立ち上がる。まずその背の高さに勝呂は驚いた。
彼女はスカートを軽く叩くと、髪を耳にかけながら顔を上げた。
自分とほとんど変わらない目線にまで来たその顔に、思わず勝呂は息を飲む。
中性的で、アンニュイな雰囲気が漂う小綺麗な顔。さらりと流れる黒髪。

「おぉー、モデルさんみたいな子やねぇ〜」

興奮気味に呟いた志摩に、同意せざるを得ない。
日本人離れした手脚の長さには思わず目を奪われる。

―――もう、なんというか、好みだった。

そう意識してしまえば途端に口は動かなくなり、顔に熱が込もる。らしくなかった。
そんな勝呂とは対するように涼し気な表情の彼女は、ふと「あ、」と声を漏らす。

「そうだ、忘れ物取りに行かなきゃ・・・」

そして「ぶつかってすみませんでした。それじゃ、」と小さく頭を下げ、小走りで
勝呂達の脇を通り抜けていく。ふわりと、何か良い匂いが鼻が感じ取る。
なびく黒髪を追うように勝呂は振り返る。
長い脚で颯爽と歩く彼女は、後ろ姿でさえも目を引く存在だった。

「しもた!名前、聞いとけばよかった!」

と、志摩が悔しそうに声を上げる。

「また志摩さんの悪いクセや・・・」
「そないなこと言わはったって子猫さん!あんなべっぴんはん、中々お目にかかれへん!
なぁ、坊?・・・坊??」

勝呂は話しを振られるも、気づくことなく、名も知らぬ彼女の後ろ姿を見送っていた。

「坊、顔真っ赤や。―――もしかして、」
「!やかましい!」

顔を覗き込んできた志摩を退け、勝呂は彼女がやって来た方へと早足で歩き出す。

「あ、ちょい坊!」
「待っておくれやす!」

慌てて志摩と子猫丸が追いかけてくる。

「かんにんやって、坊。・・・それにしてもあの子、綺麗やったなぁ〜!
あの子も祓魔塾の生徒やったら嬉しーなあ」
「そない偶然、おますわけがあらしまへんで」

子猫丸が苦笑を浮かべる。
そう、そんな偶然が都合よく―――のちに起きてしまうのだった。



2015.1.6