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Dr.ゴールデンパールの告白  





「―――私はさぁ、君に一目惚れしたと思うんだよね」
「はぁ」

佳奈子がハンジの汚い部屋を片付けていると、机に向かっていた彼女が急にそんな告白をしてきた。

奇妙な言動が多い―――というより、八割は奇妙であるハンジの言動には慣れたもので、
最近では驚き、呆れを通り越して無心の域に達した。
だから気のない返事をしたのだが、当然ながらハンジはお気に召さなかったようだ。

「おいおいカナコ!なにさ、そのうっすい反応はっ!
普通は『きゃっ』とかなんとか言って頬を染めるとこだろーが!」

そう身勝手な要望を叫びながら、なにやら書いていた紙を丸めてハンジは佳奈子に向かって投げる。

「はぁ」

佳奈子はそれをまたも気のない返事をしながらひょいと避けた。
人が片付けてる最中にこれだ。幾ら綺麗にしてもキリがない。彼女とは一緒に住みたくないものだ。

佳奈子が避けたのを見たハンジは小さく舌打ちした。それから机に突っ伏して、

「ま、そーいうとこが好きでもあるんだけど」

へへへと歯を見せて笑う。その佳奈子やモブリットの前で見せる緩んだ笑顔は、子どものような愛嬌がある。

好意の言葉と笑顔に、佳奈子は紙を拾いながら微笑む。
ハンジは挨拶のように「好き」や「愛してる」をぽんぽんと口に出すが、
それはいつも純粋で真っ直ぐなものであり不思議と軽いものに聞こえない。

「あ、さっきの一目惚れの話しの続き!」

ハンジは、ばっと体を勢いよく起こした。

「初めてカナコと会った時さ―――こう、きゅーんと来たんだよ!!」

彼女は胸を押さえて頬を染める。
だから初めて会った時、鼻息を荒くしながらあんなに目を輝かせて自分を
凝視していたのかと佳奈子は一人納得した。

「もうね、運命感じちゃったよね」
「それはまた随分とお手軽な運命ですね」

でれでれとした笑みを浮かべるハンジに、佳奈子はぴしゃりと言い放つ。

「ひっでぇー!誰にでも言ってるわけじゃないってのー」

佳奈子の言葉が冗談だと分かっているハンジは、むすっとした表情をしながらもその顔は楽しそうである。
彼女は上司だが、とても気さくで佳奈子の事も可愛がってくれるので、こんな風に軽口を言い合えるほど
佳奈子は心を開いていた。

―――こんな人が上司であったならば、少しは仕事も楽しめたであろう。
などと苦痛であった仕事でさえも、今となっては帰れぬ懐かしい場所だ。

出生が定かでない事が露呈された佳奈子の見張りもあるだろうが、それでもハンジの下に来れて良かったと思う。
―――不衛生な所がたまに傷だが。

佳奈子は笑ってハンジを真似る。

「でも、私もハンジさんのそういうとこ、好きですよ」



2014.12.13