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おあいこだよ、エンジェルスキンコーラル  





誰かに見られているような視線、それから話し声に意識がはっきりとした佳奈子は目蓋を上げた。

「わぁ!?」

すると、最初に視界いっぱいに入ってきたのは人の顔で、佳奈子は驚き思わず声を出してしまった。

「おぉ!目が覚めたんだね、カナコ!」

そう、佳奈子を驚かせた顔―――ハンジはにっこり笑う。

「え、あ、はい」

佳奈子はハンジに体を支えてもらいながらベッドから身を起こす。
が、どうにも今の状況に頭が追いつかない。

「えっと、その―――」

ベッドの上から部屋を見渡す。
そこにはハンジ以外にはリヴァイの姿(少しだけ視線が合った)、そしてエレンを除いたリヴァイ班の面子
(ペトラがほっと安堵したようで、笑みを浮かべている)がいた。
佳奈子の直属の上司であるハンジはともかく、彼らがいるという事は、ここはリヴァイ班が拠点としている
古城のようである。ハンジに連れられて頻繁に来ているのでここにいる事態はおかしくはないが、
意識を失っていた理由は全くもって分からない。

「―――あぁ、状況が飲み込めてないかな?」

佳奈子の様子を見てハンジは察したようだ。

「エレンの巨人化の実験をしていたのは覚えている?」
「はい」

佳奈子はこくりと頷く。

そういえばハンジに「カナコも行こうぜ!絶対楽しいから!!」と強引に参加させられたのだった。
そして実験は、確かエレンが巨人化出来ずに終わったはず。

「まぁ、実験はエレンが巨人化出来ないで失敗に終わった―――」

「―――かのように思えたんだけど、」とハンジは眼鏡をくいっと上げて続ける。

「そのあと、休憩がてらみんなでお茶してたらエレンがスプーンを落としたらしくて。
で、それを拾おうとしたら―――腕だけ巨人化してね。近くにいた君はその時の衝撃で気絶して、今に至るわけだ」

あぁ、そうだったと、ハンジの言葉に佳奈子の脳はじわじわと記憶を呼び覚ます。
噛み切った手が痛んだのか、エレンが手からスプーンを落とし、彼が拾おうと屈んだと同時に、佳奈子もまた
拾おうとして屈んだのだ。そうしたら、急に凄まじい熱気と爆発音がして―――そこでプツリと記憶が途絶えている。

「・・・思い出しました。ところでエレンは?」

蒸気を間近で浴びたせいか、顔が少しヒリヒリするなと思いながら、佳奈子はもう一度部屋を見渡す。
しかし、やはりエレンの姿は見つからない。

「エレンは地下の自分の部屋にいるよ。カナコの事心配してて『側にいる!』って聞かなかったんだけど、
かなりの興奮状態でね。巨人化の影響か疲労もしてたし、落ち着かせる為にも地下に行ってもらったんだ。
呼んで来ようか?」
「あ、いえ。大丈夫です。私が行きます」

佳奈子はベッドから降りる。

「体は大丈夫なのかい?」
「はい。少し顔はヒリヒリしますけど、体調は特に問題ないです」

気分が悪いだとか、目眩がするといった症状は無い。
佳奈子はきちんと体調を確認した上でそう言った。

「本当に大丈夫?気分が悪くなったらすぐ言うのよ?」

近くにやって来たペトラが心配そうな顔をする。

「はい」

佳奈子は微笑しながら返事をした。
自分を妹のように思ってくれている彼女の気遣いには自然と笑みが溢れてしまう。

エルド、グンタも声をかけてくれ(オルオも何か言おうとしていたが、ペトラに鳩尾に肘を入れられて悶絶していた)、
そしてドアのとこまで行くと、壁に寄りかかっていたリヴァイが、

「―――鍛え方が足りねぇから気絶なんかするんだ」
「・・・精進します」





階段を下りて、エレンがいる地下部屋にやって来た佳奈子はドアをノックする。

「はい」

中からエレンの声が返ってきた。

「エレン?私、佳奈子だけど、」
「カナコっ!?」

どたばたと忙しない音がしたあと、扉が勢いよく開く。

「わわっ」

危うくぶつかりそうなとこで、佳奈子は後ろへ慌てて下がる。

「お、お前大丈夫なのか!?どっか怪我とか・・・!!」
「あー・・・エレン、一旦落ち着こうか」

佳奈子の肩を痛いぐらいに掴み、顔をこれでもかと近づけて来るエレンにそう声をかければ、
彼は「わ、悪い・・・!」と素早く離れた。

「―――とりあえず、中に入ってもいい?」
「あ、あぁ」

部屋の中へ入ると、何故かエレンがおろおろとしていたので、
佳奈子はベッドに座り(他に座る場所が無かった)、隣をぽんぽんと叩いた。
彼は驚いた顔をしたが、少ししてから間を開けて座った。

「・・・俺が力を制御出来ないばっかりに悪かった」

自分でもコントロールの効かない未知の力が歯がゆいのだろう。
唇を噛んだエレンの表情は悔しさでいっぱいだった。

「まぁ、その為の実験でもあったんだし別にエレンは悪くないよ。
・・・気絶したのは私の鍛え方が足りなかったのもあるし」

「さっきリヴァイ兵長にそう言われちゃった」と苦笑してみせると、エレンも苦笑した。

「怪我とかはしてないし、顔はちょっとヒリヒリするけど・・・」
「ほんとだ。少し赤くなってる・・・」

そう、エレンが佳奈子の頬に触れる。皮膚の固い指が頬をかすると、やはり男の子なんだなとなんとなく思う。
―――それにしても、平然とこういった行動を取る彼は相変わらず鈍感というか何というか。
妙な所で鋭いのだが、どうにも異性間の感情には疎い。

「ねぇ、エレン。もし赤みが引かなかったら、責任取ってくれる?」

なんて言ってみれば、

「そ、そりゃあ、俺のせいだし、俺に出来る事だったら・・・」

責任を感じ過ぎてしまっている彼は、どうやら言葉の意味に気づいてないようだ。
佳奈子はベッドに手を付いてエレンへと身を乗り出す。ギっとベッドが軋んだ。

「―――じゃあ、お嫁さんに貰ってくれる?」
「なっ・・・!?」

エレンは一気に顔を真っ赤にさせて、思いっきり後ずさり―――下がり過ぎてベッドから落ちた。
佳奈子は上からエレンを覗き込む。仰向けに倒れた彼は顔を覆っているが、指の間から真っ赤な肌が見えていた。

「エレンも顔真っ赤だよ」
「お前のせいだろうが!」




2014.12.13