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オドントライト・クエスチョン  





例の如く、リヴァイとエレンの実験について話し合いに来たハンジに連れて来られた佳奈子。
が、恒例通り、自由過ぎる彼女は連れて来るだけ連れて来て、安定の放置である。
普段であれば、その合間は同期のエレンと過ごすことが多い佳奈子だが、
彼は生憎と前回の実験の疲れで寝ている。

そこでペトラは、話す相手もいなく、手持ち無沙汰にしている彼女を呼んでお茶にすることにした。
―――かく言うペトラも、特にすることが無く手持ち無沙汰になっている一人なのだ。
そんな二人、ペトラと佳奈子だけの、女子のみの小さなお茶会だ。





場所を移して、古城でのペトラの自室。
お茶会とは言っても、気の利いたお茶請けなんてものは無く、ただ紅茶を飲みながら話すだけだ。
会話をすることしばし。ペトラは一つ、こほんと咳をする。

「・・・ところでカナコはさ、好きな子とかいるの?」

そう、ペトラは女子ならではの話題を彼女に持ちかける。
周りには男ばかりで、こんな話しをするのはいつ以来だろうか。少し、うきうきとした。
そして佳奈子がどんな反応をするか楽しみだった。

「好きな子、ですか・・・?」

テーブルの向こうに座る彼女は、なぜか不快そうな顔をした。
その反応に疑問を持ちながらもペトラは攻めてみる。

「そうそう。気になる子とか同期にいないの?」
「うーん・・・これといっては・・・」

佳奈子は苦笑する。その、いつもとは少し違う彼女の様子がペトラは気になった。
佳奈子はとても落ち着いていて、なにかとのらりくらりと受け流す子なのだ。
そんな彼女が、少々困っているのである。

珍しくて、ペトラは更に攻めてみる。

「じゃあ、エレンはどう?」

―――ペトラから見れば、エレンの方は佳奈子に気があるように感じた。
目立ってそんな雰囲気があるわけではないのだが、彼が佳奈子に接するそれは、
他者とは異なるように見受けられた。その一方で彼女はなんら変わりはないのだが。
しかし、結局のところエレンはエレンで鈍いところがある為よく分からない。

「・・・仲の良い同期とは思いますけど、」

「というか、同い年とか年下はちょっと・・・」と彼女はカップに口をつけながら視線を逸らす。
なるほど、年上好きなのか。ペトラはだったらと、

「へぇ〜、じゃあエルヴィン団長とか好み?」

にやにや笑って頬杖を付く。

「いや、"今の"私じゃ年が離れ過ぎてますし・・・」

はははと乾いた笑いを見せる佳奈子はどこか引っかかる言い方をしたのだが、
ペトラがそれについて言う前に、「―――それより」と彼女が切り出す。

「ペトラさんはリヴァイ兵長のどんなところが好きなんです?」

にっこりと、いつもの倍は深い笑みを浮かべた佳奈子に、ペトラの頬杖は思わず崩れる。

「え、な、なんで急に、へ、兵長が出てくるの?」

自分の方が年上なんだから動揺するなと言い聞かせながら、体勢を立て直しなんとか平静を装うも、
声は裏返っていてどう見たって平静を保てていなかった。

「ペトラさん。申し訳ないですけど、丸分かりです」
「・・・」

ペトラは頬を赤くして、引きつった笑みをする。―――こんなはずじゃなかった。
本来だったら、自分が佳奈子をこんな風にからかう予定だったのに。
悔しいのと恥ずかしいので思考がぐるぐると周り、ペトラは唇をきゅっと結んだ。
しかし、そんな正常に動作しない思考に、やけに落ち着いた年下が追い討ちをかけてくる。

「あはは。そんなに反応するなんて、ペトラさんって可愛いですね」

そう言って紅茶を啜る佳奈子の優美さときたら。
睫毛の間から見える、伏し目がちになった黒い目はこんなにも妖艶だったろうか。

血と熱が、一気に顔に上ってくる。
けれど、それが彼女にからかわれたせいからなのか、はたまた"別に"あるのか―――
ペトラにはまだ、分からなかった。

「と、年上をかうからものじゃないわ!」



2015.3.4