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ゴールデンパールは加害者だった  





ハンジに資料を持ってきてくれと言われ、資料室にやって来たはいいものの、

「・・・取れない」

佳奈子は頭を後ろへ傾けたまま呟いた。指定された資料は見つけた。
が、佳奈子には高過ぎて届かないのだ。どれだけ手を伸ばしても、ジャンプしても。
台はないのかと探したのだが、生憎見つからなかった。
棚に足をかけて取ってしまおうかなんて、乱暴なやり方も考えたけれど、ここの本棚は年季が入っていて、
足場としては心許ない。下手をしたらドミノ倒しにでもなりそうだ。しかしこれで、

『高いところにあって取れません』

なんてハンジに報告でもしてみようものなら、

『全く!カナコは私がいないとダメだね!』

などと、にやけ顔で言われるに違いない。十中八九、間違いない。想像出来る。
というか、こうなることを想定していたのではないだろうか―――?
佳奈子の中で上司への不信感が募る。だったら、思い通りになるのは癪だ。
しかしどうしたものか。これといって解決策は思い浮かばない。

「はぁ・・・」

佳奈子は棚を見上げる。すると―――頭が何かにぶつかった。佳奈子は驚き、振り返る。

「み、ミケ分隊長・・・」

振り返った先にいたのは、長い前髪と髭が特徴的な、ミケ・ザカリアスだった。
どうやら佳奈子の頭がぶつかったのは、彼の上半身らしい。
それにしても、大柄なミケが背後にいても気づかないとは。
分隊長とは気配も消せるものなのだろうか。もしくは、佳奈子が鈍感なだけなのか。

「えっと、いつからそこに?」
「・・・つい、さっきだ」

ミケはぼそりと答えた。そして彼は続けてぼそりと言う。

「どれだ?」
「あ、えっと・・・そこの一番上のです、」

てっきり取ってくれるのだと思って佳奈子は指差したのだが―――

「えっ」

急に目線が高くなり、目的の資料が目と鼻の先となった。
あろうことか、ミケは自分が取るのではなく、佳奈子が取れるようにとわざわざ持ち上げたのだった。

「あの、ミケ分隊長・・・?」

佳奈子が困惑して彼の方へと顔を向ければ、

「ミーーーーケーーー!!」

恨めしそうな顔したハンジが本棚の陰から現れた。
佳奈子は驚き、ミケに持ち上げられたまま彼女を見る。ハンジはミケに突っかかっていた。

「カナコがどうするか観察してたのに君が手伝っちゃ駄目だろぉおおお!!!!」
「・・・あの、今とんでもないことを聞いたんですが」

聞き捨てならない言葉に、思わず佳奈子は口を挟む。―――この人は何と言っただろうか。

「いやね。君がどうやって私のおつかいを達成するかと思ってね!」

「跡をつけてきたんだ!」と、満面の笑みでハンジは断言した。
つまりは、最初から仕組まれていたと―――

佳奈子は真顔でハンジを見下ろした。

「モブリットさんに言いつけます」



2015.1.7