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唯一無二のスリーカラーゴールド  





全くうちの女どもときたら・・・

と、ファーランは軽く溜め息をついた。こんな風に呆れるのは、もちろん訳あっての事だ。

―――事の発端は、喧しく(いつもだが)アジトへと帰って来たイザベラだった。
ただの使いで彼女は出かけていたはずなのだが、その体はあちこちボロボロで。
そして「姉貴がぁ・・・!姉貴がぁ・・・!」と酷い顔で泣きじゃくる姿に瞬時に察した。
きっとリヴァイや、自分たちに恨みや妬みを持った者達に絡まれ、争いになったのだろう。

この地下街で実力もあって幅を利かしているのはリヴァイだ。
リヴァイの仲間であると分かっているから、大丈夫だろうと油断していた。
元々はファーランが行く予定だった。

それをどんな形でもリヴァイの役に立ちたいイザベラが、自分が行くと言い出して聞かなかったのだ。
加えて佳奈子が、自分もついて行くとお守りを買って出たものだからすっかり安心してしまった。
―――いや、この地下街で安心などしては命取りなのだ。そんな事は昔から分かりきっていたというのに。

頭が悪く、簡単な挑発にもすぐ乗ってしまうイザベラだが、それを上手く制御出来る佳奈子が一緒なら―――
と、使いに出した結果がこれだ。

「ったく、お前が付いていながらなんつーザマなんだよ・・・」

ファーランは椅子に座らせた佳奈子を見て、眉根を寄せる。

「あはは、面目ない」

いつもの穏やかな表情を崩さない佳奈子からは、全くもって反省の色が見られない。
それにファーランは罰だとばかりに、彼女の顔に出来た切り傷に消毒液を含んだ綿を擦りつける。
イザベラはとにかくうるさいので別室に追いやった。

「痛いよ、ファーラン」
「悪い子にはお似合いだ」
「痛っ」

痛みに顔をしかめる佳奈子は、イザベラ同様にボロボロだ。
しかしイザベラが泣きじゃくるほどではなく、細かな傷は多いものの、深い、致命傷になるものは無かった。
最悪の事態も想定したが、「ただいま」とひょっこり顔を覗かせた佳奈子を見た時は正直ほっとした。
だが、今は留守にしているリヴァイが帰って来た時の事を思うと―――ぞっとする。
まぁ、そこは佳奈子に任せるしかない。

「絡まれたって無視しろ。イザベラには無理でもお前なら出来ただろ」

手当てが一段落したところで、ファーランはじっと真剣に佳奈子を見つめる。

―――ボロボロの理由は佳奈子から聞いた。やはりファーランの予想通りゴロツキに絡まれたそうだ。
そしてこれも予想通り、まずイザベラが食ってかかりそうになったので、佳奈子は彼女を止めた。
しかし逆にイザベラがゴロツキに殴られ、それをイザベラが殴り返すより先に―――なんと佳奈子が殴り返した。
そこから先は、想像するまでもない。

「イザベラの、女の子の顔を殴ったんだもの。黙ってられないよね」

佳奈子は自分が正義だとでも言いたげに口にした。

「・・・お前だって女の子だろ、一応。顔に傷作ってどうするんだ。
それに下手したら死んでたかもしれない」
「大丈夫、大丈夫。もう絡んでこれないように徹底的にやったから」

彼女はにこりと微笑みながら物騒な事を言った。佳奈子は決して弱いわけではない。
むしろどこかで訓練でも受けていたかのような動きで、男を投げ飛ばしたりする。その辺のゴロツキよりは圧倒的に強い。

「そういう問題じゃなくてだな―――いや、もういい・・・」

言いたい事は山ほどあったが、ファーランは溜め息を一つついて止めた。
彼女に幾ら言った所で、なんだかんだでいつも丸め込まれてしまうのだ。
未だにファーランが勝った事など皆無だ。

ファーランが言い聞かすのを諦めたのを知ってか、佳奈子は黒目を細めて微笑む。

「ファーランは心配性だなぁ」

何てことない何気ない一言だ。だからこそ、ファーランの気持ちも知る由もない。
ファーランは、佳奈子に聞こえないように告げた。

「惚れた女の心配すんのは当然だろ、」



2014.12.25