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【うさぎさんカットもしてくれた】



「―――ねぇ、長谷部。なんでも切ってくれるって言ったよね?」

「ええ。なんでも斬って差し上げましょう」
「じゃあさ、この林檎切ってくれる?」
「・・・主命とあらば」





「わー長谷部切るの上手だねー」
「切るのは刀の性分ですから」

長谷部はにこりと笑いながら林檎の皮をするする剥いていく。はぇ〜すっごい。
しばらくその様子を見ていた私は、ふと長谷部がいつもしている白い手袋が目に入った。

「・・・おぉ、手大きいんだね。長谷部」

付けてみた手袋は、幅もだがなにより指が余った。ってか、うわっ・・・私の指、短かすぎ・・・?

「一応、"男"として顕現している身ですので」
「にしてもこんなに違うもんなんだねー・・・あ、長谷部ちょっと手出してよ。比べっ子しよう」
「えっ」
「ほれほれ」
「はい、」
「・・・やっぱり大きいだけじゃなくて指も長い・・・羨ましいな・・・・・・えいっ」
「あ、主っ?」

合わせた手をぎゅっと握ると、長谷部は戸惑った表情で視線を忙しなく彷徨わせる。
あ、顔も赤くなった。純情だな長谷部。しかし下がり眉で頬も赤くさせるとは・・・その顔、審神者以外の前でしちゃダメだよ。

林檎と同じぐらい染まってきた長谷部が気の毒になって私は手を離す。

「あはは、ごめんね」
「いえ・・・主、林檎をどうぞ」
「ありがとーいただきます・・・・・・うん!甘くて、みずみずしくて美味しい!」
「良かったですね」
「長谷部も食べな!」
「・・・よろしいのですか?」
「当ったり前じゃん。そもそも長谷部が剥いたんだしさ」
「ありがとうございます。では、いただきます」
「・・・わ、長谷部すっごい幸せそうな顔。そんなに美味しかった?」
「林檎が美味しいのもありますが、」
「が?」
「―――いえ、ふふ。なんでもないです」





「うーん・・・私も少しは料理を勉強しようかなあ」
「主には審神者という大事な命があります。他の雑用は俺達にお任せください」
「みんなと一緒になにかをするのも審神者の仕事だと思うんだよね、私」
「・・・」
「それに、『まともに包丁を扱えないなんて・・・君はそれでも文系かい?』って歌仙にも言われたしね」
「あいつには俺がよく言って聞かせます」
「長谷部。目が血走ってるけど穏便にね。和睦でお願いね」

今にも圧し斬りそうな長谷部を私は宥める。・・・長谷部みたいなタイプもいれば、宗三みたいなタイプもいるし、
ほんと刀剣男士って個性豊か過ぎ。特に打刀は個性の殴り合いだよ。

「でも、林檎の皮ぐらいは剥けるようになりたいな」
「しかし、指でも怪我をしたら・・・」
「やる前から失敗を恐れてちゃなんにも出来ないぜ。まぁ、もし切ったりしたら長谷部に手当てを頼もうかな」
「その前に俺を御側に置いてください。怪我なんてさせません」
「じゃ、長谷部に弟子入りしようかな」
「なっ・・・!俺が主に物を教えるなんて恐れ多い・・・!」
「そんな堅苦しく考えなくていいのに・・・・・・あ、でもあれだね。皮剥けるようになったら長谷部やみんなに
『剥いてー』って頼めなくなっちゃう」

「―――お気になさらず。俺に言ってくだされば、いつだって剥いて差し上げますよ」

「・・・甘やかしちゃダメだよ。付け上がっちゃうから、私」
「それならば、俺が主を"付け上がらせている"と自惚らせてください」

長谷部は胸に手をやって主命スマイルを見せる。
むむむ!歌仙のとろける笑顔もダメだけど、長谷部のこの笑顔もダメだ・・・!怠慢になる・・・許されない・・・

「・・・じゃあ私は、"長谷部に甘やかされてるんだぞー"って踏ん反り返ろう」
「・・・・・・ええ。ぜひ、くっ、そうして、ください、ははは」

そう照れ隠しに返した言葉が長谷部にはどうも面白かったらしく、口元に手を当てて笑った。
可笑しそうに笑う表情は、いつものどこか装った笑顔ではなくて破顔という表現がぴったりな物だった。

うーん、いつもそんな風に笑えばいいのになあ。
けれど、口に出してしまえば長谷場が困ってしまうのが目に見えている。なので私も一緒になって笑った。



2015.9.20