×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
【みんなに世話を焼かれて生きている】



「っぷくし!」

私はくしゃみをして、一緒に出てきた鼻水をずずずと啜る。

するとそんな私を見て薬研は、「最近は寒くなってきたもんな」といつもの兄貴オーラを出して笑いかけてくれた。
しかし彼とは真逆に、宗三は着物の袖で口元を隠しながら私に冷たい視線を寄越す。ありがとうございます。

「・・・随分と間の抜けたくしゃみですね」
「可愛らしいくしゃみだってよ、大将」
「きゃっ」
「薬研。変な解釈をしないでください。・・・主もですよ」
「はい、はい」
「はーい」
「・・・白々しい」



「それにしても寒くなってきたよねーでも、かと思えば熱い日もまだあるし」
「季節の変わり目が近付いて来てるんだろうが、なんにしろ体調には気を付けねぇとな」
「うんうん。薬研も宗三も気を付けてね?風邪とか」
「はぁ・・・」
「え。なに宗三その溜め息は」
「・・・いや、俺っち達より大将は自分の心配をだな?」
「だって、私が気を付けるより前に、歌仙もみっちゃんも長谷部も気を付けてくれるからなあ。他のみんなもそうだし・・・」

だから私はみんなの方が心配だよと言えば、薬研も宗三もきょとんとした表情を浮かべた。
あ、薬研のこういう短刀っぽい顔珍しい。なんて思って見てると、薬研はくしゃりとした笑みをして、宗三はまた溜め息を吐いた。

「―――ほんと、大将は大将だなぁ」
「どゆこと」
「良い主だってことよ」
「・・・『雅じゃない!』って歌仙に説教される私でも?」
「それは歌仙の旦那の愛だろう?」

くすくす笑って、薬研は私の頭を撫でる。これだから薬研ニキと呼ばざるをえない。
私は"良い主"という言葉に少し考える。今まで自分のことでいっぱいいっぱいで、特にそんな風に努めたことはない。

薬研は優しいし、器が大きい。だから私のことを"良い主"だと言ってくれるのだと思う。
でも、他のみんなはどうだろう。今更ながら自分がどう思われているのか気になった。

特に、宗三のような刀はどう思っているのだろうか。「僕は籠の鳥・・・」なんて暗いことを連呼するものだから、
荒療治だとばかりに内番にも遠征にもガンガン突っ込んだし、出陣も結構な数をさせてきた。
・・・うん。恨まれてもしょうがないな!

なんだか後ろめたい気持ちになっていると、また宗三の溜め息が聞こえた。
けれど、その顔はいつもより柔らかいもので。

「はぁ・・・あなたと言う人は、ほんと面倒くさいですね」
「すいません・・・」
「おまけに喧しい、野暮ったい」
「も、もうやめて!!」
「でも―――」

「嫌い、じゃないですよ。僕は」

「祝言挙げよっか、宗三」
「・・・・・・そういう、誰にでも情をかける所は嫌いです」
「たぁーいしょ。俺っちとは挙げてくれねぇのか?」
「宗三、重婚でもいい?」
「あなたの相手をするのは疲れます」

「主君、ここにいらしたのですね」

「前田くんだ。どうしたの?っと、っぷくし!」
「あぁ、ちょうど良かった。主君、これをお使いください」
「あ、ひざ掛け」
「今日は肌寒いので。女性が身体を冷やすのはよくありませんし・・・」
「前田くん・・・!ありがとう・・・!!」

感激して頭を撫でてあげると、前田くんは頬をほんのりと赤くさせてはにかんだ。
全く、これだから粟田口は最高だぜ!

「主君に喜んでもらえたのなら幸いです。・・・では、私は資源の確認に行って参ります」
「うん!本当にありがとう、前田くん!・・・あぁ〜前田くん、ほんと良い子だ」
「そう言ってもらえると兄として鼻が高いぜ」
「よし、さっそくひざ掛け使わせてもらおう!」
「・・・なぜ、僕の膝にもかけるんです?」
「寒そうだから!薬研も膝小僧出してるし、隣おいで!」
「んじゃ、お言葉に甘えて」
「ふふふ。なんかこーいうのいいよね」
「あぁ、そうだな。分かるぜ」
「僕にはよく分かりませんが・・・」

「宗三もさ、江雪と小夜ちゃんと並んでやったら分かると思うよ」

左文字兄弟のそんな場面を想像しただけで、ほんわかとした気分になって顔が緩む。正に和睦ですよ、和睦!
宗三にはそっぽを向かれてしまったけど、私の顔は緩んだままだった。



2015.9.14