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【刀剣乱舞始まってた】



「え・・・はにわ?」

目の前の喋る狐に呆然としながら、私は首を傾げた。

「違います!審神者です!さ・に・わ!!」
「さにわ、審神者・・・それってなに?」
「審神者とは、『眠っている物の想い、心を目覚めさせ、自ら戦う力を与え、振るわせる、技を持つ者』のこと―――
つまり貴女のことです、審神者殿」
「へぇ〜、ふ〜ん・・・・・・って、は??」
「貴女は審神者として選ばれたのです。刀剣男士と共に歴史修正主義者から歴史を守る為に」
「ちょっと待って。トウケンダンシ?とか、歴史修正なんちゃらとか、そんな一気に言われても意味分かんないし!
そもそも私、普通の女子高生だよ?」
「いいえ。貴女には確固たる力があります。故に選ばれたのです」
「・・・私には荷が重すぎるので辞退します」
「―――そうしますと、貴女は今ここで消えてしまいますがよろしいでしょうか?」
「んん?」

「貴女のいた時代、"未来"は、歴史修正主義者による歴史改変によって最早存在しないのです」

「私も変な夢見るもんだなぁ・・・」
「残念ながら夢ではございません。こうしている間にも歴史が改変され、未来が変わっています」
「早く夢から覚めろ、私」
「こんな話しを急にされて信じられないのも無理はありません。しかし、事実なのです。
貴女が存在していた時代は無くなってしまった。貴方は、存在していないのです。・・・ご自分の名前を言えますか?」
「そりゃ、自分の名前ぐらい、」

自分が誰であるかなんてそんなの分かり切っていることだと、私は自信満々に自分の名前を答えようとして口を開けた。
でも、開けただけで喉から声が出ることはなかった。分からないのだ。
この開けた口ですら、いったいなにを発音しようとして動かしたのか。

私は金魚のように口をぱくぱくとさせるしか出来なかった。あれ、私の名前はなんだっけ?えっと―――わたしって、だれ だっけ?
それに気付いてしまった瞬間に絶望が頭から爪先まで包み込んだ。そしてその、ぞっとする感覚にこれは夢じゃないとも分かってしまった。

「お分かりいただけたようで」
「・・・じゃあ、今の私はなんなの?」
「存在しない者、誰でもない者。実態はありますが簡単に言えば幽霊のようなものですね。
消えかかっていた貴女から、審神者としての能力を見出した政府が特別に形を与えたのです」
「・・・お母さんとお父さん、私と一緒の時代にいた人達は?」
「消滅しました」
「・・・じゃ、私が審神者になって、刀剣男士と一緒にその歴史修正なんちゃらと戦えば、」
「歴史修正主義者です」
「そう、それ。・・・つまり、私が審神者になって歴史の改変を阻止すれば―――私のいた時代は元に戻るの?」

「はい、その通りです」

「で。審神者にはなりませんって断ろうとするもんなら、消えるぞって脅すのね。汚ぇなあ、政府。
最初からイエスしか言わせないの見え見えじゃんか」
「・・・」
「沈黙は肯定だぞ、クソ狐」
「これは申し遅れました。"こんのすけ"でございます、審神者殿」
「はいはい、こんのすけね」
「では、審神者の命、受けて頂けるということでよろしいでしょうか?」
「受けるもなにもやるしかないじゃんか」
「ありがとうございます」
「気持ち込もってねーぞ」

「―――それでは審神者殿。この五振りの刀剣の中から一振り選んでください。貴女の最初の刀剣男士を」

「全部はダメ?」
「駄目です。一振り、お選びください」
「けちんぼ。じゃ、おすすめとかは」
「貴女の直感で選んで頂ければ確かかと」
「ふぅん・・・・・・・じゃあ、これって、うお!眩し!!」

「僕は歌仙兼定。風流を愛する文系名刀さ。どうぞよろしく」

「・・・おや。これはまた随分と若い主だね」と、緩やかに微笑んだ彼につい見惚れてしまうのはしょうがないと思う。
だって美丈夫だ。顔がすんごい整っている。やっぱ第一印象って顔だわ。

でも、この時の私は、歌仙が今の微笑よりもっと破壊力のあるとろけるような笑みをするのをまだ知らなかった。



2015.9.11