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【やっぱりしっくりくるね】



「主、ちょっといいかい?」
「うん、いいよ光忠ぁー」

執務なんてやってらんねぇ!と部屋で五体投地していた私は、ごろんと寝返りをして
光忠の方へ体を向けた。そして、ギクリと固まる。光忠の表情がいつもと違ったからだ。

だいたいあのイケメンスマイルを浮かべている顔が、今は無表情なのである。
しかもなんか怒りが混じってる感じの。彼を苦笑させるぐらいの困らせる事はした経験があるが、
怒らせるなんてした試しが無い私は、思わずきょどり、慌てて飛び起きて背筋を正した。

「ど、どどどどうしたのっ?」
「・・・いや、それはこっちの台詞だよ」

そう、私と向かい合うようにして座った光忠は、「落ち着いて」と苦笑する。
・・・あれ?怒ってないのか??

「んじゃ、改めてどうしたの?なんかあった光忠、」
「―――それだよ、それ」
「それ?」
「その光忠っていうの」

「前はみっちゃんって呼んでくれてたのに、最近じゃ呼んでくれなくなったよね主。
―――貞ちゃんが来てから」


「・・・・・・気付いて、たんだ」
「そりゃ、主のことだもの。―――訳を教えてくれるかい?」

じっと彼は一つの目で私を見つめる。教えてくれるかい?なんて受け身な言葉だったけど、
教えてもらうまでここから離れる気は無いということが、その目からありありと分かった。

さて、光忠の言う通り、私は太鼓鐘貞宗が来てから意図的に彼をみっちゃんと呼ぶことを止めた。
そしてそれは突発的ではなく、実は前々から決めていたのだった。

「みっちゃんか・・・はは、懐かしいな」

ファーストコンタクト時、燭台切光忠は長いし、光忠はなんだか固い感じだから、
んじゃみっちゃんだと、私が付けたあだ名に、光忠はそうはにかんだのが懐かしい。
そしてその際に太鼓鐘貞宗のことを聞いたわけだ。
もちろん、貞ちゃん、みっちゃんと呼び合う仲であるということも。

―――特別仲の良い、それこそ親友であろう間柄の彼らが使うものを私が勝手に真似をするのは、
二人が良い気分ではないだろうとその時思ったのだ。
だから、太鼓鐘貞宗が我が本丸へやって来た今、私はみっちゃん呼びを止めたわけである。
QED証明終わり。

と、以上のことを目の前の彼にまるっと伝えた。
すると光忠はきょとんとしたかと思えば、次には眉を下げた。

「もう・・・主はそうやって自己完結しちゃうとこがあるんだから・・・・・・」
「そう・・・かな?」
「うん、そうだよ」
「そうか・・・」
「あのさ、主。僕ね、最初こそ貞ちゃんに呼ばれてるみたいで嬉しいなって思ってたよ。
けどね、今はそうじゃないんだ」

光忠はすっと流れるように距離を詰め、私の両手を包んだ。
驚いて身を引くも、それを阻止するかのごとく、ぎゅっと手を掴まれる。
少し、強引だ。こ、こんな光忠知らない・・・!どことなく潤んでいる黄金の瞳が間近に迫った。

「主にみっちゃんって呼んで貰えるのが嬉しいんだ」

「みっちゃん、」
「あは。久しぶりに呼んでくれたね」

このあと滅茶苦茶みっちゃん呼びした。



2017.1.10