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【解脱しよ】



「・・・良い天気だねぇ」
「そうですね」

「・・・」
「・・・」

か、会話が続かねぇ・・・!!
三点リーダーが支配する空気の中、その気まずさに私は冷や汗ダラダタになる。
鳥の鳴き声が更にそれを助長させていて、ますますこの縁側の静寂を際立たせた。

―――新しく来た数珠丸と親睦を深めようとお茶に誘ったのは良かったけど、
若干の人見知りを発動している私と、見るからに物静かでお喋りなタイプじゃない数珠丸。
会話が続かないのは必定だった。

あぁ、やけにフランクに数珠丸に絡んでいた山伏が羨ましい。正直、絡みに行った時は肝が冷えたけども。
コミュ力を・・・!もっと私にコミュ力を・・・!なんて願ってたら、「では、共に修行に励もうぞ!主殿!」
なんて山伏の声が聞こえたような気がした。・・・気がしただけであって欲しい。
カカカとか空耳だよ、うん。

「気を使わせてしまっているようですね、すみません・・・」
「え!そ、そんなことないよっ?」

眉を下げた数珠丸に私はそう繕ったものの、声は裏返っているし、どもってるしで、まるで説得力が無い。
数珠丸の眉は依然、下がりっぱなしだった。

「顔に出ています」
「も、申し訳ないです・・・」
「謝ることではありません。主は心根が素直な方なのですよ」

数珠丸は薄らと笑う。小さな唇が僅かに上がっただけなのに、思わず見惚れてしまった。
流石は天下五剣と言うべきか。解脱したい。

・・・しかし参った。気まずさは幾分か無くなったが、今度は恥ずかしい。
数珠丸の顔を直視出来ず、視線をあっちこっちに彷徨わせていれば、
そこへゆったりとした声が聞こえてきた。

「―――主、数珠丸殿。茶でもどうだ?」
「三日月!」
「三日月殿」

ゆったりした声に似合う、柔らかな笑みを浮かべた三日月がお茶の乗った盆を持って立っていた。
後光が射してる・・・!!あなたが神か・・・!いや、正真正銘の神様か。

「俺も一緒に構わないか?」
「うん!あっ・・・数珠丸も三日月がいた方がいいよね?」
「はい、主もその方が気が楽でしょうし」

いかん。誤解されてる。そういうつもりで言ったんじゃないんだ。
こくりと小さく首を動かした数珠丸に、私は慌てて頭をぶんぶん振る。

「あぁ!ごめんね!私じゃなくて、数珠丸の方が楽かなあって思ったんだよ・・・!!」

「はっはっは。歌仙の言うとおりだなあ、主よ」

よっこらせと私の隣りに腰かけた三日月に私は首を傾げた。

「え、歌仙?」
「うむ。主は人見知りならぬ、"刀見知り"をするから今頃困っているだろうとな」
「刀見知りって語呂悪いな・・・ってか、お見通しなのか・・・」
「―――そういう訳でな、数珠丸殿。主はただ恥ずかしがっているだけだ。なに、直に慣れるさ」
「なるほど、分かりました。主、どうか気を張らずにゆっくりで構いませんから」
「そ、そう言って貰えるとありがたいです・・・」
「どうだ?可愛いだろう、我らの主は」
「ぶふっ!!おい!なに言ってんの!!」

まさかの不意打ちについお茶を吹き出してしまった。
いきなりなにを言い出すんだ、あんたのお茶には酒でも入ってるのか。
三日月に詰め寄るも、いつも通りにこにこ笑っているだけだった。

まぁ、三日月は置いとくとして。数珠丸にはスルーしていいからと言わなくちゃ。
と、思って彼の方を向いたけども。

「ええ。可愛らしい方ですね」

「〜っ!!」
「はっはっは。俺には見せない初々しい反応だなあ。少し妬けるぞ」



2016.3.25