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【名無しの権兵衛ちゃん】



「えぇ〜!?主、自分の名前分からないんですか!?」

「あれ。私、言ってなかったっけ?」
「聞いてないです!初耳ですよ!な、骨喰?」
「あぁ。俺も初めて聞いた」
「ほら〜!!」

ほれ見たことかと言いたげな表情で、鯰尾は私に非難めいた視線を送る。
あれ、私ほんとに説明してないんだっけ?そういえば、なんで審神者になったのかとか、
そういう話しは歌仙ぐらいとしかしてないような・・・うん、してねぇな。

「ごめん、してないね。・・・でも、みんな聞いて来ないし私の名前なんか興味無いのかなーって、」

ん?あれ?なんか妙な空気になったぞ?
鯰尾どころか、あの骨喰までもが目を見開いて私を見ていた。

「主。それ、本気で言ってます??」
「え、うん。マジだけど・・・」
「はぁー・・・俺、主のこと心配になってきました」
「えっえっ」
「主、大丈夫か?」
「えっ。私、大丈夫じゃないの??」





「―――いいですか、主。俺達は興味無いから聞かないってわけじゃあなくて、"あえて聞かない"んですよ」
「なんで?」
「・・・真の名、真名を教える行為は神隠しに繋がる」
「神隠し・・・」
「もしかして、俺達が神ってこと忘れてません?」
「あっ」

そういやそうだった。今更思い出すと、鯰尾にまた溜め息をつかれてしまった。

「はぁー・・・歌仙さんとかこんのすけに説明されなかったんですか?」
「うー・・・あー・・・説明されたような、されてないような・・・あっ」

確か強制的に審神者に任命されて、歌仙と会って自己紹介された時。
「私も名乗りたい所だけど、自分の名前忘れちゃって」と言ったら、
「"僕達"の前では名を名乗る必要はないよ」って、けっこう厳しめな顔をした歌仙に注意された覚えがある。

でも、やっぱ詳しいことは教えてくれなかったな。ごたごたしてから私も深く追求しなかったし。
それからどんどん刀が増えていったけど、みんな私の名前を聞いてきたりはしなかったし、
そんなこんなで今に至ってるんだよね。

「・・・"自分達の前では名を名乗る必要はない"とは、歌仙に言われたけど」
「あぁー、なるほどなあ・・・歌仙さんの優しさってヤツですかねぇ」
「?で、名前を教えることと神隠しがどう繋がるの??」

「真名は、そのものを表す。つまりはそのもの自身。
俺達には真名で人を縛って、神域に連れ去る力がある」


「それが、神隠し・・・」
「歌仙さんが詳しく説明しなかったのは、きっと主を怖がらせちゃうと思ったからですよ」
「そっか・・・」

「―――俺達のこと、怖くなりました?」

「え?なんで??」
「なんでって・・・俺達は主のこと連れ去ること出来るんですよ?」
「鯰尾は私を神隠ししたいの?」
「!そ、そんなつもりはこれぽっちもないですよっ!!」

「でしょ?そーいうことだよ。・・・それに私みんなが良い刀だってこと分かってるし。
感謝はしても、怖いだとかそんな風には思わないよ」


「主・・・ありがとうございます、」
「俺も兄弟と同じだ、主。記憶の無い俺に良くしてくれた主に、そんなことはしない」
「うん、分かってるよ」

私が頷くと、二人は顔を見合わせて微笑んだ。

「「俺の主が主で良かった(です)」」



2016.3.3