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【ばんざーい、ばんざーい】



「主、万歳してごらん」
「え。なんで」

「いいからいいから。ほら、源氏ばんざーい」

いや、源氏を付ける必要性は無いだろ。
廊下で会うなり、脈絡のないことを言ってきた髭切を不思議に思いながら、私は大人しく万歳をした。

「・・・源氏ばんざー、い!?」

両手を上げた私は、つい声が裏返った。目の前の彼に腰を掴まれ、上へと持ち上げられたせいだ。

「ありゃ?君、けっこう食べてる印象なのに軽いね。それに細い」
「ちょ!腰に力を入れるな!!ってか、下ろして!」
「んー、僕にこうされるのは嫌い?」
「むしろ大歓迎です!!!!」
「なら何も問題ないね」

あぁ!しまった、つい本音が。

髭切は良い返事だとばかりに、小さな子どもをあやすかのごとく、私を抱き上げたまま
くるりと回ってみせる。しかし、幾ら私がみんなから見て赤子同然の年だとしても、
これで喜ぶような精神年齢はとっくのとうに卒業しているのだ。

逆に、楽しそうに微笑む髭切にこうも見つめられては恥ずかしくて敵わない。
困った。困った困った駒鳥姉妹。などと、ふざけていた時。

「兄者あああああああ!!」

―――と、廊下の奥からもの凄い速さで疾走してくる膝丸が見えた。
流石の健脚だけど、廊下を走ると長谷部に怒られるよ。

「兄者っ!女人を、主を抱き上げるなど不躾であるぞっ・・・!!」

そう、息を乱しながら、膝丸が髭切に詰め寄った。
けれど対する髭切は、のらりくらりという様子で微笑する。

「だって、主が軽くて可愛いから」
「私のせいなのかよ」
「ふふふ。そうとも言えるね」
「とにかく!・・・主を下ろせ」
「分かったよ」

疲れ切った顔した膝丸の言葉に、やっと髭切は私を下ろした。

「ありがと、膝丸」
「僕にお礼はないのかい?」
「むしろ何でお礼言って貰えると思うの??」
「大歓迎なんでしょ?」
「と、時と場合による・・・!」
「すまないな主。兄者が迷惑をかけた・・・」
「いいよ、いいよー気にしないでー」
「そうそう。気にしない、気にしない」

「「髭切(兄者)は気にしよう(してくれ)」」
「手厳しいなあ」



2016.3.2