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【曰く、親鳥のような気分らしい】



「主!匿まってくれ!!」
「わぁ!?ビックリした・・・って、兼さんそこ押し入れなんですけど」

慌ただしい様子の和泉守は、声もかけずに私の部屋に入って来た上に、押し入れまで開けて入ろうとしている。
おい。仮にも乙女の部屋なんだけど。

「いいか?二代目が来ても俺はいねぇって言ってくれ!」
「歌仙になんかしたの?ってか、まずきちんと事情を説明してよ。話しの内容次第では匿ってあげなくもない」

だから出てこいと畳を叩けば、和泉守は渋々出てきた。彼はどかっと胡座をかいて口を尖らす。

「・・・夕餉のつまみ食いがバレて追われてる」
「えぇー・・・」

子どもかよ。いや、和泉守は刀剣男士の中じゃ最年少なんだっけ。
とは言え、186センチの男がやるには子ども過ぎやしないか。

「それはさ、和泉守が悪いじゃん」
「けどよぉ、ちょっとぐらいいいじゃねぇかよ!なにもあんなに怒んなくったって・・・」
「そりゃ勝手に食べるからだよ。食べたいんなら素直に『味見させてくれ』って言えばいいじゃんか」
「・・・そう言って食わしてくれると思うか?」
「うん。言えばくれるでしょ」
「は?くれねぇだろ??」
「え?くれないの??」

私がきょとんとすれば、和泉守もきょとんとした表情を浮かべた。

「私いっつも『一口ちょうだい』って言って貰ってるけど・・・」
「いや、それはアンタだからだろ・・・」
「そうなのかなあ?」

確かに、みっちゃんなんかは自分から「味見するかい?」って食べさせてくれる。
しかもあーんで。更にはふぅふぅまでして食べさせてくれるんだぜ?あと、一期もふぅふぅまでしてくれる。
ちなみに歌仙は「自分で食べなさい」って言ってしてくれないけど、私を甘やかさないそんなとこが
流石は我が近侍である。

「・・・とにかくさ、非があるのは和泉守の方なんだからちゃんと謝らなくちゃ。
このまんまだと夕餉無しになっちゃうかもよ?」
「うっ!それは勘弁してくれ・・・」
「でしょ?なんだったら私も一緒に謝ってあげるからさ」
「いや、それはいらねぇ。テメェのケツぐらいテメェで拭くぜ」
「おぉ、それでこそ兼さん!格好良いよ」

私はうんうん頷きながら立ち上がり、廊下へと続く障子に手をかけた。
そして、廊下にいた彼に笑いかける。

「―――じゃあ、和泉守が謝るそうなので、あとは二人でごゆっくり」
「あぁ。そうせてもらうよ」
「げぇ!二代目!?」

さて、私は今日も厨に行って味見させてもらおーっと。
後ろから和泉守が「謀ったな主!」とか喚く声が聞こえるけど知ったこっちゃない。

私は静かに障子を閉めて厨へと足を運び始めた。



2016.1.11