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【刀剣女士の膝枕・・・え?いない?そう・・・】



縁側でお茶を飲んでいる三日月を見つけた私は、そのどこか神秘的で絵画のような姿に
つい足を止めてしまう。天下五剣と言われるだけあって、三日月宗近という刀はこうして
お茶を飲んでいる姿でさえも美しい。・・・というか、三日月だけじゃなくどの刀も美形だ。
時折思い出しては、平凡な自分の容姿が恥ずかしくなってしまう。辛いです・・・

「―――おや、主ではないか。そんなとこに突っ立っていないで近う寄れ」

三日月は微笑みながら、自分の隣をぽんぽんと叩く。これほど"近う寄れ"が似合うのも三日月ぐらいだ。

「んじゃ、失礼して」

私は言う通りに、隣に腰掛ける。遠くから見た時は神秘的であった空間も、こうして近くに来ると
不思議と心が安らいだ。ふと、その安心感からかあくびが出た。

「ふぁ〜・・・なんだかお昼寝したい気分だねぇ。天気も良いし」
「ふむ、そうだな。だったらするといい」
「え、なに三日月。その膝ぽんぽんは」

にっこり笑った三日月は、私の方を向いて自分の膝を叩いている。
も、もしやこの刀・・・

「昼寝したいのだろう?だったら俺の膝を枕に使うといい」
「や、やっぱり・・・!お昼寝したい気分ってだけで寝たいわけじゃないから大丈夫だよ!」
「む。天下五剣の膝では不満か?」
「いや、不満っていうか、むしろ恐れ多いというか・・・って、引っ張るな!引っ張るな!」
「はっはっは。良いではないか、良いではないか」
「良くない良くない!!」

三日月が私の肩を抱いて自分の膝に倒そうと引っ張る。
倒れてたまるかとなんとか踏ん張るけど、この爺、思ったより力が強い。踏ん張りも効かない。
そしてとうとう彼の膝の上に倒されてしまった。

「うぅ・・・私の初膝枕がぁ・・・」
「ほう。俺が主の"初めて"か。嬉しいな」
「青江みたいな妙な含みを持たせて言わないでくれますか」
「はっはっは」
「・・・・・・くっそ、最初は可愛い女の子が良かった・・・乱ちゃんが良かった・・・」
「乱も男だぞ?」
「可愛いからどうでもいい・・・」

そんな感じでしばらくめそめそしていた私だったが、なんだかんだで三日月の膝枕に落ち着いていた。
でも、枕としてはやっぱ固い。男の人はみんなこう固い太ももなんだろうかと考えていると、
真上にある三日月の目と視線が合った。瞳の中に、三日月が浮かんでる。

長い睫毛の下の、その瞳が自分を見下ろしているのがどうにも恥ずかしくて横を向こうとしたら、
そっと頬に手を添えられた。

「やはり柔らかいな。人は、」

憂いを帯びた笑みで、三日月は私の頬を撫でる。壊れないように、傷つけないようにと、恐る恐るといった手つきだ。
さっき私を引っ張り倒した強引さはどこに行ったのか。私は三日月の手に自分の手を重ねる。

「―――三日月。そんなおっかなびっくり触らなくたって私は壊れないよ?」

私はそんな柔じゃない。

そう、私が三日月をじっと見つめれば、彼は目を少し見開いた。それからいつもの笑みを作り、

「・・・おい。柔じゃないとは言ったけど、だからって頬を引っ張るな」
「はっはっは、気持ちの良いほど伸びるものだな。愉快、愉快」

こっちは愉快じゃねぇよとは思いつつ、楽しそうな三日月に怒る気になどなれるはずもなく。
結局、気が済むまで好きなようにさせた私は甘いのだろうか。



2015.11.27