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アンダンテでは物足りないインドスタールビー  





「クリスタ睫毛付いてるよ」
「え、ほんとう?」

佳奈子が自身の眉間の下、鼻の付け根辺りを指差す。
クリスタもそれを見て鼻の周辺を触るが、彼女のむずがゆそうな表情から察するに
取れそうで取れてないようである。照れ隠しにクリスタは笑う。

「あはは・・・ごめん取ってくれる?」
「うん」

返事と一緒に伸びて来た佳奈子の指にクリスタは目を閉じる。
彼女の指、親指と人差し指だろうか。二本が目と目の間をすすっと緩やかな動作で
摘まんでいくのを感じた。こそばゆい感覚にふと口角を上げて笑ったその時───
ちゅっと、笑った唇を軽く吸われた気がした。

知らないわけではない、柔らかな衝撃に反射的に目を開けると

「ごめん。可愛くてつい」

そう謝罪の言葉を口にしながら、佳奈子はまた悪びれる様子も無くクリスタの唇を優しく奪った。
途端にクリスタの顔は熱を生む。他人に容姿のことを褒められるのは恥ずかしいが、
それが目の前の彼女なら───心のそこから想っている人なら格段だ。
嬉しさと恥ずかしさでいっぱいいっぱいになってしまう。

「睫毛は取れたから」

クリスタを見守るように黒い両目を細めて微笑む佳奈子は限りなく優しい。
先ほどの不意打ちのキスみたくたまに驚かされることはあるけれど、
いつもクリスタのペースに合わせてくれる。

「うん、ありがとう・・・あのねカナコ、」

乾いた口内から出た声はか細かった。
それはきっと、いつもと違うペースに乗ろうとしているからだろう。

クリスタは彼女が配分してくれた歩調を乱した。

「カナコだったら、いつだって私にキスしていいから・・・」



2018.4.3