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もしも『彼女』が『彼』だったら-01  





まったくもって運がない―――

ミーナはふぅと小さく溜め息を零しながら、山となった課題のノートを抱え直す。
全員の課題のノートを運ぶ・・・自分じゃなくたって、誰でも出来る事だ。
今し方、廊下を追いかけっこのごとく駆けていったサシャとコニーでさえも出来る事だ。
しかし、そうであってもミーナに拒否権はない。

なんせ教官の言う事は絶対だ。この壁の中で王が絶対的存在であるように、ここでの全ては
教官その人なのだ。逆らったってなんにもならない。

特別、ミーナが講義中に居眠りしてただとか、不真面目な態度を取っただとかそんな事はなかった。
ただ、たまたま今日指名されたのがミーナだっただけである。―――故に運がない。
訓練中に持たされる土嚢がたっぷり入ったリュックよりかは遥かにましだが、それでもそれなりに重い。
"女の子"には重いのだ。

「持つよ、ミーナ」

か弱い女の子の嘆きを聞きつけたのか、そんな手助けの言葉が男の子の声色で降りてきた。
男性と言うには柔らかで高く、男の子というのがぴったりな声の彼―――佳奈子は、
ミーナの隣に立ち、にこっと笑いながら両手を差し出している。童顔が作用して、実に可愛らしい笑みだ。

「持とうか?」なんて疑問形じゃないとこが彼らしく、それでいて更に点数が高いとこだ。
けれど、この願ってもない申し出にミーナは首を横に振る。

「ううん。せっかくだけど、大丈夫だから」

一度は断ってみせるのが礼儀でもあるのだが、今回は他にあった。
ライナーのような、筋肉の塊のような大男であれば手放しで持ってもらっていた。
が、目の前の彼は自分とそう背丈の変わらない、小柄な男の子。頼むのがなんだか申し訳ないのである。
・・・それから、彼にご執心な彼女の存在が恐ろしかったりした。

断られると思わなかったのだろう。佳奈子はきょとんとした表情を浮かべた。
そして察しのいい彼は、次には苦笑してみせた。

「あー・・・もしかして、頼りないとか思ってる?」
「・・・・・・あはは」

正直にも言えず、ミーナも苦笑してみるが、最早肯定してるも同義であった。
ミーナはうな垂れる。

「・・・ごめん」
「あはは、いいっていいって。そう見えてもしょーがない」

ミーナを慰めるように、ふわっとした言い方をした佳奈子は、「けどさ、」と付け足しながら袖をまくった。
標準の肌色よりワントーン白い腕が現れ、ミーナは思わず心臓が跳ねてしまう。
想像していたものより太い腕。引き締まっていて、うっすらと浮き出ている血管はどことなく色っぽい。
決して、決してこんなのは頼りなさげな"男の子"の腕ではない!

男の子だと思っていた彼はいつの間にか大人の男のような表情になっており、
淡く色づいた小さな唇を緩やかに動かして少女を意識させるのだ。

「―――こう見えて、けっこう筋肉付いてるよ?」



2017.01.05