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アンバーオパールの恩返し-02  





「「恩返し??」」

アルミン、マルコが二人揃って首を傾げるのに、サシャは大きく頷く。

「はい、恩返しです!・・・いつもカナコにはお世話になりっぱなしなので、」
「まぁ、そうだろうけど・・・」

「なんで今更?」と、マルコが不思議そうな表情を浮かべた。アルミンも同様だ。

確かに、彼女にはもう数え切れないほど助けてもらっているのだが、なぜ今になって
その恩を返そうという気になったのかは少々訳がある。

「―――実はミカサに、

『カナコはこんなにもサシャに尽くしているのに、貴方は恩の一つも返そうとしない』

と、言われてしまいまして・・・」

あははと、サシャは乾いた笑い声を出しながら頭に手をやる。
佳奈子を頼る度、彼女に小言を言われてはいたものの、この間の"それ"は今までで一番
サシャの胸と頭に突き刺さったのだった。

「それはなんとも・・・」
「ミカサらしいなぁ・・・」

容易に想像がついたのだろう。彼らは苦笑した。

「でも、ほんとミカサの言う通りなんですよね、」

サシャは視線を落として、唇を噛み締める。

「自分が頼りたい時だけ頼って、カナコには何にもしてあげられてないです」
「サシャ・・・」

励ましの言葉をかけようと名を読んだアルミンに、サシャは静かに首を振った。

「いいんです、本当のことですから。けどだからこそ、今、恩返しをしたいんです」

「したいんですけど・・・」と、決意表明をしたばかりなのに、サシャの言葉は
段々と尻すぼみになっていく。そうして、ついにはがくりと頭を垂れてしまった。

「どう恩を返したらいいものか分からなくて、こうして困っているんです・・・・」

座学などは教えてもらっている身であるサシャが出来るわけもなく、なら実技はどうかと
いえば、彼女は立体機動は普通に扱えているし、アドバイスはライナーからして
もらっているようだ。サシャより成績が上の彼からのアドバイスがあるのならば、当然出番が無い。

対人格闘も似たようなものだ。こちらはあのアニが佳奈子に稽古をつけている。
サシャの出番は―――もちろん無い。

「んー・・・乗馬を教えてあげたらどうかな?」
「それも考えたんですけど・・・」

マルコの提案に、サシャは顔を上げるも、表情を曇らせる。
彼の言う通り、佳奈子はいまいち馬の扱いが苦手なようで、乗馬は不得意だ。
逆にサシャは得意分野であり、その手でいこうと思ったのだが。

「教官になんて言って馬を借りたらいいか分からず・・・」
「あー・・・」

苦笑いをしながらマルコは言葉を漏らした。
ただでさえ、サシャは入団式から教官に目を付けられている。
曖昧な理由で願い出ても、きっと許可は降りないだろう。

ここで教官が大きな障害、壁となるなんてと、サシャの歯がゆい思いは募る。
しかし、それを中和させるように、アルミンの優しい声が耳に届いた。

「サシャ。理由はそのまま、カナコに教えるっていう自主練で大丈夫だよ」
「ほんとですか、アルミン・・・?」
「ただ、サシャが言ってもちょっと説得力が無いというか、教官に変に勘繰られちゃうだろうね・・・」
「わ、私ってそこまで・・・!?」

ばっさりと切り捨てられ、顔色を悪くするサシャに、彼は「だからさ、」と続けた。

「―――僕も一緒に教官の所に行くよ」
「・・・えぇ!い、いいんですか!?」

サシャは忙しなく瞬きを繰り返しながらアルミンを凝視する。
それに彼はにっこりと微笑んだ。

「うん。サシャが頑張ってるの見たら、応援したくなっちゃった」
「あ、アルミン〜!!私が不甲斐ないばかりに・・・!ありがとうございます・・・!!」
「・・・じゃあ、僕も仲間に入れてもらっていいかな?」

控えめな笑みを浮かべながら手を上げたマルコに、サシャの視界はじわりと滲んだ。

「ま、マルコまで・・・!!ありがとうございますっありがとうございますっ・・・!!」
「た、ただし僕達はあくまで証人として立ち会うだけだから、
理由はサシャがきちんと自分で説明するんだよ?」

サシャの縋り付きそうなほどの勢いに、アルミンはたじたじになりながらもそう言った。
有らん限りの声で、サシャは返事をする。

「はい!もちろんです!」



2016.3.4