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ソグディアナイト・ダイアローグ・キッス-03  





佳奈子は一人、悶々としながら兵団施設の廊下を歩く。

あの水汲みでの件以来アニとは言葉を交わしていない。
彼女が佳奈子を避けているのと、佳奈子自身がアニとどう接したらいいのか分からなくなってしまったのだ。
今のアニは最初の頃のような厚い氷の向こう側にいて、それに加え触れたら壊れてしまいそうな脆さがあった。
そんな硝子のような彼女と中途半端に向かい合えば、些細な衝撃でたちまち割れ、その破片で佳奈子も
アニ自身でさえも傷ついてしまうだろう。

・・・ただ、一つだけはっきりとしていることがある。
あの琥珀のような色をした夕日の中、アニは確かに佳奈子にキスをしたのだ。
彼女が佳奈子を遠ざけているのがその何よりの証拠だ。
今もアニが普通に接していれば、あぁあれは気のせいだったのだと佳奈子も思いその件はそれで終わり。
しかしアニの一変した態度で曖昧だった事が真実となって浮き彫りになってしまった。

―――あのキスは事故でも間違いでもなく、アニが自ら起こした行動なのだ。



こんな、同性にキスをされるということは初めてで佳奈子はどうしたらいいか分からない。
まず同性依然に異性にさえもキスなんてされたことはないし、恥ずかしながら男性と付き合った事がない。
強いて言えば仕事が恋人だった。

ここは誰かに相談したいところだが、一番身近なミカサにこんな事を知られれば彼女が何をするか分からないから
口が裂けても言えない。他の女子は・・・お喋りな年頃の彼女たちが「内緒なんだけど・・・」と、
口頭につけた伝言ゲームが恐ろしい。同性にましてやアニにキスをされたどうしたらいいなんて、包み隠さず話す
わけではないが、「キスをされたらしい」という噂が出回るだけで居心地が悪い。
ましてやそれに根も葉もない尾ひれがついたら最悪だ。好きな彼女たちをそんな事で裏切られたとがっかりしたくない。

・・・しかしあまり悠長にもしていられない。
佳奈子自身この出来事をいつまでも胸にしまっておけるわけでもなく、アニを見れば思い出す。
長引けば長引くほど、気まずく微妙な関係が点々と続いてしまう。ミカサに気づかれるのも時間の問題だ。

誰か。誰か、口が堅そうで頼りになりそうな人はいないものか。

そう思った時佳奈子は廊下の先に大きな背中を見つけた。
佳奈子はハっとして駆け寄り、その太い腕を引っ張る。

「ライナー・・・!相談がある・・・!」

みんなの頼れる兄貴ライナーは、ぎょっとしながらも頷いてくれた。

「お、おう、俺でよければ・・・」



2014.6.3