×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
ソグディアナイト・ダイアローグ・キッス-01  





アニの様子が変わった。

誰に対してもつんとしていて、他人に興味が無さそうだった彼女。
いつもどこか怒っているようで滅多に笑うことがなかった。
唯一その顔がやや柔らかくなるのは、彼女の得意とする対人格闘だった。

佳奈子も初めは例に漏れず、アニの態度は素っ気ないものであった。
だが、懐かない野良猫はどうにか振り向かせたくなるもので―――。
それとなく彼女に声をかけたり、食事を共にしたり、対人格闘のコツを教えてもらったりなどなど。
そうした結果、氷が溶けるかの如くアニの冷たい接し方は少しずつ改善され、今では、

「カナコ、水汲み行くよ」
「あ、うん」

こうして自分から話しかけてくれるまでになった(サボり癖も少し直った)。実に嬉しいことなのだが問題が一つ。
懐かない野良猫を懐かせたはいいものの、懐き過ぎてしまったのだ。それを面白く思わないのが既にいる飼い猫、ミカサだ。

アニが親しく接してくれるに連れてミカサとの衝突が増えたのだ。
ミカサも早々普段から噛み付いたりしないのだが、どうにも彼女とは折り合いが悪い。
そしてアニもわざとミカサに喧嘩を売るような態度を取ることがある為困りものだ。
現に水汲みに誘うタイミングが、宿舎のベッドの上でミカサと雑談していたところだ。

機嫌を悪くしたミカサは隣でアニを睨みつけている。当の彼女は素知らぬ顔だが。

「じゃあミカサ。行ってくるから」
「・・・」

行かないでと目で訴えているミカサに優しく微笑む。なんだか子どもを家に残して仕事に行く母親のような気分だ。
しかし水汲みは当番だ、サボるわけにはいかない。佳奈子は戻ってきたら彼女に根掘り葉掘り聞かれそうだなと苦笑しながら腰を上げる。
するとミカサが腕を引いて耳打ちした。

彼女の警告にも似たそれは予見だった。

「カナコ、あの女に気を許してはいけない」



2014.5.27