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ライトニングクリスタルは欲張りがお好き  





エレンの側にいられれば、それだけで充分で幸せだ。
家族と共に過ごせる時がなによりもミカサの宝だ。

しかし、それに比べて佳奈子はどうだろう。
もちろん佳奈子の側にいられるのは幸せだ。一度の離別を経てこうして再開出来た奇跡を大切にしなければならない。

・・・でも足りないのだ。

名前を呼ばれればもっと呼んで欲しいと思う。
笑いかけてくれたならば、その笑みをもっと見たいと思う。
触れるほどの距離ならぴったりとくっついてしまいたい。

数え上げたら切りが無いほど、ミカサは佳奈子に対して欲張りになってしまったのだ。

こんな欲張りではきっと彼女に嫌われてしまう。湯船に肩まで浸かると、ミカサは溜め息を吐いた。

「溜め息を吐くと幸せが逃げるよ?」

佳奈子が隣にやって来て同じく肩まで浸かる。
そう言ったが、ミカサの溜め息はたった今彼女が拾って幸せにしてくれた。
こんなにも些細なことから幸せにしてくれる佳奈子に、更に強請るなんてとミカサは罪悪感が募る。
そしてその罪悪感からぽつりと口に出した。

「・・・私は欲張りだ」

脈絡の無い話しに彼女はきょとんとした顔を見せるも、直ぐにふんわりと笑った。

「ミカサ。人ってものはみんな欲張りなんだよ」
「ほんと・・・?」
「うん、ほんと」

佳奈子は浴槽の淵に肘を付き、そこに顎を乗せる。何も纏ってない顕になった上半身に今更ながらどきりとする。
火照った肌や、肌を伝う雫だとか、水気で湿った髪。見慣れたはずのそれら全てが新しいものに見えた。
ずっと見ているのはなんだがいけないことのように思えてミカサは慌てて視線を逸した。
顔が熱いのが分かる。それが逆上せたわけでもないのも。

「欲張りだからここまで進化出来たんだよ」

佳奈子は湯気を吐くようにふぅっと熱い息を静かに吐く。
それから、潤んだ漆黒の双眸でミカサを見つめる。思わずミカサは唾を飲み込んだ。

「だから、もっと欲張っていいんだよミカサ」



2014.4.29