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サードオニキスの純情的初恋  





それは、マルコ・ボットの短い人生の中で感情が最大に昂ぶった時であった。

抱きしめたら柔らかそうな一際小さな体格。思わず触れてみたくなる黒い髪。
自分だけを見てほしい穏やかなその目。どんな味がするのか興味を惹かれる赤い唇。

激しい感情が脳天から爪先にまでマルコの中で駆け巡る。

マルコをこんな気持ちにさせたのは、カナコ・サイトウという周りとは少し顔立ちの違った、恐らく東洋の血が混じっている女の子。

―――彼女の名前は分かった。

けれど、もっともっと知りたいとマルコは思った。
胸が苦しいほどのこの愛おしい感情。それは恋であり、またマルコにとっての初恋であり、一目惚れであった。





あれから数ヶ月経ち、嬉しいことにマルコは彼女、佳奈子と大分親しい間柄になれた・・・と、マルコ自身は思っている。
誰とでも分け隔てなく話す彼女の姿を見るとどうにも自信が無くなるのだ。
だが、以前よりも佳奈子を好きになっているということは、やはりそれだけ彼女との距離が縮まった証拠なのではないだろうか。
そう思うと嬉しさが込み上げてくる。

マルコはそっと、自分の向かいで立体起動装置の点検をしている佳奈子に視線をやる。
少し汚れた指先、髪を耳にかける仕草、時折漏れる独り言、数え上げたら切りが無いほど、彼女の一挙手一投足が好きだ。

ふと、佳奈子が下げていた視線を上げ、マルコと目が合った。
佳奈子は濁りのない艶のある黒い瞳を細めて、困った風にはにかむ。マルコはこの表情が大好きだった。

それに釣られて、マルコの口からするりと言葉が出た。

「・・・カナコは一目惚れって信じる?」



2014.2.3