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脈打つルビー  




今日はベッドが広い。
いつも隣で寝ている自分と同じ黒髪をしたミカサは夜直の見張りでいない。
狭いよりも広いが良いに決まっているのだろうが、いつも一緒な彼女の不在は寂しいものだ。

最初は身に覚えのない執着にうんざりもしていたというのに不思議だ。
この寂しさは、日々を重ねていく内にこんなにもミカサを好いてしまった証拠そのもの。

こんなつもりじゃなかったと佳奈子は後悔にも似た気持ちを抱く。
だって、この夢はいつ覚めてしまうか分からない。現実よりも望んでしまえば辛いのは自分だ。

しかし実際は上手くいかないものだ。
傷つかないように必要以上の接触は避けるつもりだったのに、結局そんなことは出来なかった。

好きだ。彼女らが、彼らが、どうしようもなく愛おしくてしょうがない。

佳奈子はベッドの上で丸くなる。
前までは一人で考える時間にほっとしたものだが、今では一人の時間が怖かった。
改めて分かってしまう。所詮、自分と彼らでは生きる世界が違うのだと。自分は異物にしか過ぎないのだと。
その真実が辛くて、涙が出そうになってしまう。

「・・・カナコ、起きてる?」

小声で名前を呼ばれ、佳奈子の目から涙が引っ込んだ。
もぞもぞと動いて声の主を確認してみると、それはクリスタであった。
薄手の毛布を身にまとい、月明かりの中佇む彼女は本当の女神のようだ。

「・・・どうしたの?」

就寝時間はとっくに過ぎている。佳奈子も声を潜めた。
クリスタは佳奈子の上の段で眠っているのだが、その彼女がわざわざ降りてくるとは一体どうしたのか。

「ごめん・・・。寝てたよね・・・?」
「ううん。それは大丈夫だけど・・・」

クリスタの様子はなんだかもじもじとしていて歯切れも悪い。
けれども不思議とイライラとしないのは彼女だからだろうか。
クリスタはきゅっと唇を結ぶと、意を決したかのようにまっすぐと碧眼で佳奈子を見つめた。

「あの、あのねっ、一緒に寝てもいい・・・?」

彼女は掠れ気味の声で言った直後、暗がりでも分かるほどに顔を朱に染めた。

見張り当番はミカサだけではない。今日はクリスタといつも一緒なユミルもなのだ。
クリスタも広くなったベッドが寂しいのだろう。お互いに隣にいるはずの存在がいない夜。
この寂しくて寒い夜を共に越えるとしたら、この月の女神しかいないだろう。

佳奈子は不安気にちらちらとこちらを見ているクリスタの為に、スペースを空けてやった。
それから布団を持ち上げて、空いた場所をぽんぽんと叩く。

「いいよ、クリスタ。ここにおいで」



2014.1.1