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もう、ツァボライトはいないの!  





教官からしばらく休憩の言葉を聞いて、ライナーはふぅーと大きく息を吐く。
毎日のことながら、疲れない訓練など無い。特にこの兵站訓練は応える。
ずっしりと重い砂が詰まったリュックを背負い、馬の速度に合わせて走らねばならない。
ライナーは流れる汗を拭いながら周りを見渡す。

疲れ果て座り込む者もいれば、肩で大きく息を整えている者もいる。
皆それぞれだが疲労しているのは全員同じだ。酷い者は吐いてしまっている。
ろくに腹も膨れない食事をしていても、出る時は出るものだ。・・・あまり見ていると貰って吐いてしまう。

まぁ、全部出してしまえば楽になるだろうと、ライナーは視線を外した。
そして新たに視線を向けた先に、疲弊している様子とは違う挙動不審な姿を発見した。
やけにきょろきょろとせわしない。ライナーは近づいて声をかける。

「おい、カナコ。どうした?」
「あ、ライナー」

挙動不審だった佳奈子は、ライナーの呼びかけでその動きはやめたものの、まだそわそわとしていた。

「・・・お前なんか変だぞ」

「休憩なんだから休め」と、彼女の肩を軽く叩く。きっと体を酷使し過ぎて少し頭が混乱しているだけだろう。
そういうやつも珍しくない。

「キュウ、ケイ?」

初めて聞いた言葉だとでもいうように、佳奈子はたどたどしい発音をして首を傾げる。
まるで「キュウケイとはなんなの?ライナー」とでも問いかけているようなしぐさ。
ライナーを見つめる黒い瞳はいつもと違ってどこかどんよりと濁っている。
不安を感じたライナーはどうにか佳奈子をいつもの彼女に戻そうと口を開いたが、そうする前に濁った瞳に光が戻った。

「あぁ休憩ね、休憩。うん」

ふんわり微笑む彼女に、ライナーは安心すると同時に精神的にどっと疲れてしまった。
・・・けれどもライナーの疲れはまだ終わらない。もう半日以上も走りっぱなしだというのに、佳奈子はなおも不思議そうに首を傾けて、

「もう、休んでいいんだ?」



2013.12.24