×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
始まりのジェダイド  





小鳥の囀りと、暖かな日差しを瞼の裏で感じながら、ミカサはつかの間の睡眠から目を覚ました。

「おはよう、ミカサ」

ベッドの上、ミカサが最初に目にしたのは、白い顔をして微笑む佳奈子であった。
どこか眼がぼーっとして見えるのは、彼女が低血圧だからだ。起床して3、4時間ほどはこの状態である。

「・・・おはよう、カナコ」

ミカサも佳奈子に習って目を細める。たかが挨拶だけれど、ミカサはたったこれだけのことでも幸福を感じた。

朝、目を覚ませば佳奈子がいる。数年前までは日常であった日々が、こうしてまた返ってきた。
場所も、ミカサ自身も、彼女も、色々と変わってはしまったけれど、佳奈子と再び会えただけで充分だ。

「寝癖ついてる」

佳奈子がミカサの頭をそっと撫でる。その心地良い手に、ミカサは目を閉じた。
何時だったか、幼い頃父と母に撫でてもらった感触が蘇る。

・・・ずっとこうしていられたらいいのに。
兵団も、巨人も、壁も、全部忘れて、エレンと佳奈子、それからアルミンと、ひっそりと生きてさえいければ。
だがそう願う一方で、それが叶わない夢であるのをミカサは嫌でも知っている。
だってこの世界は残酷で、戦わなければ生きていけないから。

最後に一撫でしたあと、佳奈子の手が頭から離れて行ったのを感じ、ミカサは瞼を上げた。

「ミカサ、そろそろ起きなくちゃ」

2013.10.8