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結局、ミカサはエレンが心配で佳奈子を置いて街へと来てしまった。
・・・そのエレンにも「たまには女子と行動しろ」と煙たがられてしまい別行動となったが。

「ミカサはわがままだよ」

佳奈子のあの言葉と表情がミカサの頭から離れない。自分は彼女を怒らせてしまったのだろうかとミカサは一人思う。
何しろ佳奈子に否定的な事を言われた試しがないのでよく分からない。エレンは感情の起伏が激しいし、顔にも出やすいから
実に分かりやすい。でも、佳奈子は常に微笑んでいるだけで心を探ろうとすれば逆にミカサが読まれてしまうことが多々だ。
しかし彼女のその察しの良さで救われていることも事実だった。

楽しんでいる女子の輪から離れているミカサは、俯いて石畳を靴で擦る。

―――佳奈子が大切だ。

大事にしたいし、失いたくない。どうにかして、謝って、離れてしまった距離を縮めたい。彼女の心を取り戻したい。
けれど何を謝ればいいのかミカサには分からなかった。

佳奈子を選べなくて?
エレンを選べなくて?
それともやっぱり両方だなんて言ったから?

だが、どう悩んだってミカサにはどちらか片一方なんて選択など出来やしなかった。
なんて難しいのだろう。ミカサは溜め息をついた。

「ミカサ?どうしたの」
「・・・クリスタ」

涼やかな声に顔を上げると、そこには心配そうな表情のクリスタと、

「まったくお優しい女神様は・・・」

気だるそうなユミルがいた。クリスタはそんなユミルの言葉を聞き流してこほんと咳払いをする。

「今日のミカサ、元気がないからどうしたのかなーって」
「カナコのことに決まってるだろ」
「ユミルっ!」

クリスタは頬を膨らませてユミルを睨むがなんの迫力もない。
ミカサは佳奈子のことで悩んでいることをずばりと当てられ、驚いてユミルを見た。

「すごい。どうして分かったの?」
「お前が悩んだり、元気ないのは多方エレンかカナコって決まってるだろ」

ユミルは腕を組んで眉間にシワを寄せる。

「で、エレンとはいつも通り。そうなると消去法的にカナコになるわけだ。実際ここにもいないしな」

どこか人とは一歩距離を置いているユミルだけあってその読みは的確だった。

「ね、ミカサ。良かったら話してくれないかな?力になれるかもしれないし・・・」

クリスタがユミルを軽く押しのけてミカサに向かって微笑む。
佳奈子のことで他人に介入されるのは嫌だったが、ここは彼女を取り戻す為だとミカサはそっと口を開いた。

「・・・カナコを怒らせてしまった。私が、カナコの望む答えを言えなかったから」

しかし詳細までは話さない。それこそ他人には割り込んできて欲しくなかった。

「えっ、カナコが怒ったの・・・?」

クリスタが信じられないとでもいうような声を出す。確かに想像出来ないだろう。
佳奈子はいつも微笑んでいて怒鳴ることだってないのだ。

しかし、ユミルは違った。彼女の反応はクリスタとは真逆であった。

「何も驚くことじゃないだろクリスタ」
「驚くよ!あのカナコが怒ったんだよ?」
「あのなぁ・・・」

ユミルは頭をがしがしとかいて大きく溜め息を吐いた。

「お前らアイツを聖人だとでも思ってるのか?お前らが盲信し過ぎているからだろうが、アイツはクリスタ、ミカサ、
お前らとなんら変わらない人間だ。怒るぐらいはするさ」

彼女のそれにクリスタはハっとした顔をしたあと口を閉ざし、ミカサも言葉を失う。佳奈子が普通の人間?違う。
佳奈子は優しくて、強くて、ミカサの知らないことをたくさん知っている素晴らしい人だ。
ミカサなんかとはまるで違う。比べるのもおこがましい。

誰よりも佳奈子を理解しているのはミカサであって、他の誰でもない。
しかしどうしてか、ユミルはミカサの知らない佳奈子を知っている。どうしてもそれを認めたくない。
認めるわけにはいかなかった。

「ま、カナコのことだからちょっとイラついてキツイこと言っただけだろ。・・・おいおい、そんな怖い顔で睨むなって」

佳奈子を侮辱された気がしてついユミルを睨むと、彼女は「怖い、怖い」とへらへら笑った。
けれど次の瞬間には表情を引き締めて、

「だが、いい機会だから言っておく。・・・お前ら、他の奴らにも言えるがその盲信を止めておくこった」


「それがアイツを苦しめる」



2014.2.22